2011 Fiscal Year Research-status Report
ムージルの演劇批評研究―価値評価の試みと『特性のない男』創作への影響分析
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23520407
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
長谷川 淳基 椙山女学園大学, 人間関係学部, 教授 (40198718)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
本「研究目的」のうち、研究初年度(平成23年4月)から取り組むべき課題は以下の2点であった。1.ローベルト・ムージルの演劇批評を分析し、作家としてのムージルではなく、演劇批評家としてのムージルの評価判定を行う。2.ウィーンが「特性のない都市」としてムージルに意識化される過程について、明らかにする。演劇批評家としての4年間にわたる体験によって、ムージルは「性格のない男」や「特性のない都市・ウィーン」のモチーフを着想し、これが下敷きになって『特性のない男』が生み出されたことを論証する。また「研究実施計画」は以下の2項目であった。1.資料収集とその分析により研究を進める。収集する資料は(1)ムージルが批評対象としてとりあげた演劇作品。(2)同時代のムージル以外の演劇批評家の批評。(3)研究文献、関連の参考文献。以上の資料を、国内外において収集する。2.R・ムージル協会ならびにコリーノ博士より研究推進に必要な支援を受ける。 「研究実施計画」の結果について―研究初年度は上記計画の1.に関し集中的に取り組んだ。ムージルが批評した演劇作品を購入した。購入できない作品のうち、コピー可能なものはコピーした。閲覧のみ許可された作品については、ノートをとる作業を行った。作品の所在が確認できないものがあることが判明した。23年度についてはムージル協会やコリーノ博士からの研究サポートを受けることはなかった。 23年度「研究実績」結果は以下の3項目である。1.演劇作品の一部モデルとみなしうる作品があることを確認した。2.ムージルの基本概念「特性」が、批評対象の演劇作品で複数回、取り上げられていることを確認した。3.ローベルト・ムージルとアルフレート・ケル リヒャルト・ベーア‐ホフマン:『シャロレー伯爵』批評について(椙山女学園大学「人間関係学研究」第10号 p. 27-40)で、研究課題に関連する分析を書いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
科学研究費を申請した時点では、本研究課題に充てることのできる時間・エネルギーすなわち「エフォート」は25パーセントであった。しかしながら、図らずも平成23年度(研究初年度)4月より、勤務先の椙山女学園大学において、国際交流センター長を命じられることになった。そのために本研究課題に充てることのできる時間は、当初の予定とは相違することとなった。科学研究費への申請が採択された旨の通知をいただいたのは、平成23年5月に入ってからのことであり、その5月の時点では上記椙山女学園大学国際交流センター長の職務を降りることはもはやできなかった。その後平成23年度中は、この業務に関して週3回の打ち合わせや、週末の行事などに時間を取られることとなった。 以上が、本研究の進捗に関してやや遅れが生じている主たる理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究の進め方については以下の3点である。1.平成23年度と同様の方法で国内と国外において研究資料の収集と発見に努め、またこれら資料の分析と考察を行い、研究課題に取り組む。2. ムージルの演劇批評の翻訳出版を視野に入れて、研究の本体である翻訳の作業についても着手する。3.カール・コリーノ博士ならびにムージル協会より、研究推進に必要な支援を受ける。 上記、椙山女学園大学国際交流センター長の職務は今年度も継続する。しかしながら1年間を経過して、この業務内容への理解も進んだことにより、研究課題への取り組みへの影響は、昨年ほどには大きくはならないと考えている。 それでも、平成24年度中の研究活動によって、平成23年度分の研究の遅れのすべてを回復するのは無理ではないかと考えている。 国際交流センター長の任期は24年度限りであるので、25年度(研究年度3年目)と26年度(研究最終年度)にかけて研究計画の遅れを回復し、最終的には当初の研究計画を100%果たす予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度(平成24年度)の研究費の使用は以下の研究計画を実施することに伴い発生する経費への支出である。すなわち、1.平成24年度においては、平成23年度と同様の方法で国内外において研究資料の収集と発見に努め、またこれらの資料の分析と考察を行うことにより研究を推進する。2.ムージルの演劇批評が、現代的な価値を有するか否か、別の言い方をするならば、翻訳出版を行う価値を持つかどうか、の検討を開始する。そのための基本作業として、ムージルの演劇批評について翻訳に向けた試訳に着手する。3.カール・コリーノ博士ならびにムージル協会より、研究推進に必要な支援を受ける。 したがって「研究費の使用」については、資料収集に必要な費用(旅費、資料購入費、コピー代など)の支出、ならびに研究推進に必要な専門知識の提供への謝礼が主たる内容である。
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Research Products
(1 results)