2014 Fiscal Year Annual Research Report
ムージルの演劇批評研究―価値評価の試みと『特性のない男』創作への影響分析
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23520407
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
長谷川 淳基 椙山女学園大学, 人間関係学部, 教授 (40198718)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | ローベルト・ムージル / 演劇批評 / 特性のない男 / アルフレート・ケル / ウィーン / ベルリン / 特性のある男 / 性格のない男 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究成果として論文2本の印刷・公表と口頭による研究報告1件を行なった。また、研究成果全般を踏まえてドイツ語論文の執筆を終えた。以上4点のタイトルと概要は以下のとおりである。1. 論文「ローベルト・ムージルのウィーン演劇批評について―H.シュティフテッガーとA.ヴィルトガンス批判」。本論では、同時代のウィーン演劇を第1次大戦後のオーストリアの偏狭なドイツ・ナショナリズムの反映あるいはこれへの迎合と見るムージルの批判的見解を分析した。2. 論文「ローベルト・ムージルのシェークスピア批評―アルフレート・ケルの影響について」。本論ではムージルの演劇批評が全体としてアルフレート・ケルの演劇批評に強い影響を受けている点について、ムージルとケル両者のシェークスピア批評を比較論証した。3. 口頭発表「ローベルト・ムージルの特性のある演劇批評」。ムージルの演劇批評の傾向が強く出ているものとして、シュティフテッガーの民衆劇「ラックス山」へのムージルの批評を紹介した。4.論文「ローベルト・ムージルの演劇批評について―またはアルフレート・ケルの、ムージルへの影響」(ドイツ語論文。カール・コリーノの校閲を経ている)。本論文はこの3月に執筆し終えたもので、未発表である。概要は、ムージルの演劇批評とムージルの長編小説「特性のない男」との関連を論じたものであり、本研究課題「ムージルの演劇批評研究―価値評価の試みと『特性のない男』創作への影響分析」についての成果報告の本体部分をなすものである。すなわちムージルの小説『特性のない男』は、そのモチーフの源をアルフレート・ケルの一本の演劇批評にさかのぼることができる(1906年ごろ)。のちに演劇批評家としての時代にムージルはこの批評を再発見し(1920年代)、ケルのこの観念に基づき、形式・内容にわたりムージル独自の小説を展開・形成するに至った。
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Research Products
(3 results)