2014 Fiscal Year Annual Research Report
中世ドイツ叙事文学における表現技法の全体像を解明する
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23520410
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
武市 修 関西大学, 文学部, 教授 (80140242)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 代動詞 / 縮約形 / 否定表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、『ザクセン宝鑑』について散文で書かれた本文のラント法の第一部の表現の特徴を代動詞、縮約形および否定表現について全用例を抽出して分析した。これまで調べてきた中高ドイツ語叙事作品の表現と比較すべく、同じ視点からハルトマン・フォン・アウエの『哀れなハインリヒ』の用例を分析し、両作品に現われる用例の比較から、中世叙事作品に見られる表現形式の特徴を改めて確認した。 『ザクセン宝鑑』にも中高ドイツ語tuonに当たるdonの代動詞用法があり、これは当時低地ドイツ語でも見られる現象であったが、中高ドイツ語叙事文学ではそれが大いに押韻に利用されていたことが確認できた。縮約形に関しては、当時の低地ドイツ語には高地ドイツ語には見られない語の短縮形があり、方言的な差異があるが、中高ドイツ語の縮約形の用法は押韻文学ならではの技法であることが明らかになった。また、否定に関しても調べたところ、『ザクセン宝鑑』では否定辞と否定語による二重否定が一般的であるのに対し、叙事文学では詩行のリズムの関係で単独の否定と二重否定が巧みに使い分けられていることが見て取れた。 このような調査結果から、これまで明らかにしてきたさまざまな表現はやはり、押韻文学たる中高ドイツ語諸作品独特の技法であると結論づけることができ、「中世ドイツ叙事文学における表現技法の全体像を解明する」という当該科研費の研究課題を満たすことができた。
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Research Products
(3 results)