2013 Fiscal Year Research-status Report
グリム兄弟におけるドイツ・ロマン派の連続性と変容―イメージとテクストの協働
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23520411
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
村山 功光 関西学院大学, 文学部, 教授 (20460016)
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Keywords | グリム兄弟 / ヘルダー / ルンゲ / 民衆詩 / 子ども観 / 自然観 |
Research Abstract |
グリム兄弟の文学観を分析するために、2013年度は主に〈民衆詩〉への関心の先駆者J.G.Herderとの比較考察を行った。9月には日本ヘルダー学会国際コロキウム「Herder und Japan」で口頭発表"Ueber die volkstueliche Poesie bei Herder, den Bruedern Grimm und Kunio Yanagita"を行い、近代人の〈民衆詩〉への憧憬を18世紀後半(ヘルダー)、19世紀初頭(グリム兄弟)と明治期日本(柳田国男)とで比較考察した(2015年に論文集としてドイツで出版予定)。また、〈民衆詩〉への関心が美的観点(ヘルダー)から倫理的観点(グリム兄弟)へと重心移動していることを、論文"'Volkspoesie' als 'Kindheits-' und 'Kinderliteratur' -- von Herder zu den Bruedern Grimm"にまとめた(2014年9月にフランクフルト大学H.-H.Ewers教授退官記念論集としてドイツで出版予定)。本研究テーマ内で並行して追究している画家Ph.O.Rungeとの関係については、論文"Zur Visualisierung einer Landschaft der 'Naturpoesie' -- die Brueder Grimm und Philipp Otto Runges Konzept einer 'neuen Landschaft'"でルンゲの描く子ども・四季の表象とグリム兄弟の子ども観・自然観との親縁性を指摘した(『グリム童話集』200年記念論集"Märchen, Mythen und Moderne: 200 Jahre 'Kinder- und Hausmaerchen'"として2014年に出版予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グリム兄弟における〈民衆詩〉の概念を、その最大の先駆者J.G.ヘルダーとの比較を通じて明らかにすることができた。ヘルダーのグリム兄弟への影響関係については、従来しばしば指摘されては来たがその内容を分析した研究は皆無であった。〈民衆詩〉を美的観点から称揚するヘルダー、倫理的評価に重心を移したグリム兄弟という対比を明確にしたほか、〈民衆詩〉への関心を近代人の〈自然〉への憧憬として捉え(近代日本をも射程に入れ)たことにより、研究を深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年夏にフランクフルト大学のH.-H.Ewers教授と研究の打ち合わせを行う。研究代表者は研究の将来の展開として、〈民衆詩〉への関心がヨーロッパやアメリカだけでなく、近代化の過程で非ヨーロッパ世界(特に日本)でも喚起されたことを、〈文化批判〉の枠内で捉える視点を深めようと考えている。Ewers教授もこの点に感心を抱いているので、ドイツ語圏の1800年期(ドイツ・ロマン派)と近代日本における文学・文化的パラダイム転換を比較研究の可能性を模索していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度に予定していた、ドイツ・フランクフルト大学児童文学研究所の H.-H. Ewers 教授との打ち合わせの予定が2014年8月に変更されたため。 2014年8月にドイツに渡航する旅費として使用するほか、図書費に充てる予定。
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Research Products
(2 results)