2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520412
|
Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
高名 康文 成城大学, 文芸学部, 准教授 (80320266)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | パロディー / 狐物語 |
Research Abstract |
M. A. Rose, Parody: ancient, modern, and post-modern, Cambridge, 1993およびD. Sangsue, La Relation parodique, Jose Corti, 2007を導きの糸にしながら、古代から現代までのパロディー作品およびに理論の変遷をふりかえった。その際には、これまで取り組みが不足していたセルバンテスの『ドン・キホーテ』、スターンの『トリストラム・シャンディ』、ラブレーの『ガルガンチュアとパンタグリュエル』など、パロディーを論じる際によく取り上げられる作品をまとめて通読することにより、諸理論の具体的理解に努めた。これにより、『狐物語』におけるテクストのもじりを論じる際には、戯画化(travesty)とバーレスク(burlesque)というパロディーに隣接する手法が重要であることが明らかになった。今後論を執筆する際には、計画通り、L. Hatcheonの提示する広義のパロディーに拠りつつも、誤解を避けるために、これらの用語を併記することにしたい。著述としては、中世の嘆きのディスクールの基本形を提供する哀悼歌のテクストを検討して訳出することで、パロディー作品によるこれらのテクストのもじりの様態を知るための助けにするため、「ソルデル、ベルトラン・ダラマノン、ペイレ・ブレモン・リカス・ノヴァスによる哀悼歌(planh)三篇(翻訳)」を発表した。『狐物語』を初めとする中世フランス文学のテクストの読解の精度をあげ、また、研究の能率を高めるためにF. E. Godefroyの古仏語辞典のデータベースを導入した。当初はCD-ROMを購入する予定だったが、版元が変わってオンラインデータベースのみとなったために、予算が30万ほど超過し、フランスへの文献調査に出かけることはかなわなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画に示した読書計画が3月中には終わらなかったという点でやや遅れている。諸理論の理解のために、これまで取り組みが不足していたパロディー文学にあたったことが遅延の理由であるが、理論に関する理解が深まるという意味では、本研究のために不可欠の作業であったと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
パロディーの新たな理論モデルを『狐物語』に応用しながら練り上げる。その際には,申請者がかつて発表した論文でとりあげた箇所を中心にしつつも,R. Bellon, Diversite et unite dans le Roman de Renart(リヨン第二大学に出された国家博士論文,1992年)や,国際動物叙事詩学会が発行している雑誌Reinardusで論じられている『狐物語』における「パロディー的なもの」も検討の対象にする。また,余裕があれば2008年に刊行された『カイエ・ド・ルシェルシュ・メディエヴァル(中世研究誌)』15号の「中世文学におけるパロディー的なものの誘惑」特集に掲載されている論文を導きの糸として,『狐物語』以外のパロディーにも新しい理論の応用は可能か検討を加えたい。理論の紹介と『狐物語』の応用についてパイロット的な位置づけの論文を日本語で執筆し,大学の紀要に発表して,国内の研究者の反応を探りたいと考える。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
パリの国立図書館に行き、国内で入手が困難な文献をまとめて収集する。また、パロディー関連の資料を購入する。このために旅費と物品費を使用する。
|
Research Products
(1 results)