2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520416
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
西野 由希子 茨城大学, 人文学部, 教授 (40262357)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 香港文学 / 香港 / 中国 |
Research Abstract |
今年度は、研究の初年度として、基礎的な調査や作業を中心に行った。計画していた調査のうち、(1)海外の「モダニズム文学」の翻訳や紹介等関連文献の資料収集、(2)香港の作家によるモダニズム文学創作に関する回想資料や散文等の調査、に着手し、これまでに収集してすでに所蔵している資料等を利用したほか、香港中文大学がWEB上で提供している香港の雑誌記事データベース「香港文学資料庫」を活用した。まだ調査は初期段階であるので、2年目も調査を継続し、データを追加して、整理を行っていく。また、(3)文化大革命時期の香港文学の状況、香港の文学者の発言や文章、文化大革命と関連する作品について、香港中文大学中国研究服務中心、および香港中文大学中文系において予備的な調査を行うとともに、関連書籍・資料等によって考察を進めた。特に、創作については、予想していたように該当するものはかなり少ないが、引き続き、資料の調査にあたる。(4)文学者と他分野の芸術家の共同制作についての研究は、香港においてこのような活動を中心的に推進してきた作家・也斯のこれまでの共同制作について、所蔵の資料を調査するとともに、香港で、準備段階にあたる資料調査を行った。也斯本人へのインタビューも行うことができ、1984年に他の分野の芸術家との最初の共同制作である「『游詩』詩画展」を開き、同年、詩とダンスとの共同制作公演「舞文・遊詩」を開催したこと、それ以降現在までの共同制作の具体的な開催内容や関係した芸術家たちについて、またそれらの作品・公演についての本人の考えなどを聞き取ることができた。こういった共同制作が、也斯本人の詩や小説の創作とどのような関係にあり、どのように取り組まれてきたものであるか整理し、論文を執筆した。2012年6月に発行される雑誌に掲載される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、以下の3つの角度から香港文学の「転換期」としての1970年代を詳細に検討し、香港文学史の再構築を図るとともに、中国文学及び日本、韓国、台湾などのアジアの文学と異なる指向・性格を持つことになった香港文学の独自性を明らかにすることを研究の目的としている。3つの角度とは、(1)1970年代に形成された香港独特のモダニズム文学(モダニズム詩)が香港文学にもたらしたもの、(2)作家・也斯が中心的に取り組んできた美術や写真、映像など他の芸術の分野との共同によるコラボレーションの創作が、香港文学に与えた影響、(3)文化大革命時期(1960年代後半から1970年代)と、その終結後の1980年代における中国文学との関係、である。この研究目的のために、初年度は、本研究の基礎となる以下の4つの点について、データの調査・収集を行うよう計画していた。(1)ラテンアメリカ文学を中心とする海外の「モダニズム文学」の翻訳・紹介の文献の調査。(2)モダニズム文学の香港での創作に関する作家の回想、散文等の収集。(3)文化大革命について、香港の文学者の発言や文章の調査。以上については計画に沿って、資料の調査を開始し、データ収集と整理にあたっている。(4)文学者と他分野の芸術家の共同制作の調査。この点についても、資料の調査・収集にあたるとともに、キーパーソンである作家・也斯にインタビューを行った。また、そのインタビューを参考に、次年度以降に行う香港での調査の計画を立てることができた。以上のように、ほぼ計画通りに調査を進めることができ、一部については2年目以降に予定していた調査にも着手することができたので、本年度の研究はおおむね順調に進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究は内容としてはほぼ予定通りに進んでいるが、資料調査については、香港中文大学がWEB上で提供しているデータベースを活用して予備的な調査を進めたこともあり、年間に2回予定していた香港での調査を1回実施した。本研究にとって重要な意味を持つ作家・也斯へのインタビュー調査、研究へのアドバイスを受けることができたので、本研究の2年目にあたる2012年度は、それらの成果をもとに、当初の計画、研究の目的に沿って、引き続き、データの収集を行い、資料の整理と考察を行っていく。(1)ラテンアメリカ文学を中心とする海外の「モダニズム文学」の翻訳・紹介について、現地で資料調査を行うとともに、WEB上で提供されているデータベースを活用して、データを収集し、「参考文献一覧」の作成にあたる。(2)香港での資料調査、関連する資料の購入、およびWEB上のデータベースを活用して、モダニズム文学の香港での創作に関する作家の回想、散文等の収集を行い、上述の「参考文献一覧」の中で、関連文献として整理する。(3)香港での資料調査、関連する文献・資料の購入、WEB上のデータベースを活用しての調査により、文化大革命に関する香港の文学者の発言や文章、関連する創作作品を収集し、整理、分析する。(4)香港において展開された文学と他分野の芸術家との共同制作について、これまで調査した基礎的な事項を整理するとともに、現地での調査により、関連する資料の収集、関係する文学者・芸術家へのインタビューなどを実施する。それらを整理し、このような芸術・創作活動が香港文学に与えた影響や意味を考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、香港での資料調査、インタビュー調査を2回実施する計画である。その際に、資料の収集、関連する文献の購入、調査補助として、旅費、書籍購入費(備品および消耗品)、人件費・謝金、その他(複写費)を使用する。資料の収集やデータの整理に必要なパソコン関連のソフト・パソコン周辺機器・消耗品購入のために、備品・消耗品費を使用する。資料整理の補助を依頼し、人件費・謝金を使用する。本研究課題に関する研究の交流・指導を受けるため、研究会等に出席して報告等を行う予定であり、そのために旅費を使用する。
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