2014 Fiscal Year Research-status Report
東京と南洋を往還する帝国の残映とゴジラ映画史50年の比較文化史
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23520423
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
猪俣 賢司 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (40223292)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 比較文学 / ゴジラ / モスラ / 日本映画 / 戦後日本 / 東京 / 南洋 / 核兵器 |
Outline of Annual Research Achievements |
『ゴジラ』(1954年)に始まる「ゴジラ映画史50年」とも言うべき“もう一つの文化史”には,成瀬巳喜男,小津安二郎などの1950年代の戦後日本映画とも分かち難く連動し,「帝国」日本と「敗戦国」日本の連続した昭和史が表象されている。ゴジラは,「東京」と「南洋」を往復する存在であり,本研究は,(1)ゴジラ映画が一貫して描き続けてきた帝都東京の歴史的・地理的特質という観点,及び,(2)『モスラ』(1961年)にもその痕跡が残されている戦前・戦後の日本と深く係わった南洋史・南洋史観(南洋憧憬)という二つの観点を交差させ,これまで学問的俎上に載せられることのなかった50年に亙るゴジラ映画の描いてきた日本の戦後比較文化史を研究するものである。 敗戦国から立ち直ろうと1950年代に再軍備化されるなど,「ゴジラ映画史」から抽出される戦後の歴史表象(航空機・船舶・鉄道・軍事・交通・都市・海洋など)を研究することを主眼とし,大東亜戦争を経験した「帝国の残映」─東京と南洋の「往還」,即ち,戦前と戦後の「連続性」─を浮き彫りにすることによって,昭和史の表象空間─「郷愁と鎮魂の空間」─を明らかにする。 当該年度は,書籍の刊行を目指して,これまで行なってきた研究を整理し,まとめる作業に着手した。全体の約半分程度まで進めることができた。 また,表象文化論学会第9回研究発表集会(平成26年11月8日,新潟大学)に於いて,シンポジウム「ゴジラ再考」を行ない,「水爆か,生命か―発光する背びれと東京1954年―」(ゴジラの歩いた東京1954年―帰りたかった祖国―,発光する背びれと銀座のネオン―「水爆か,生命か」―,南下する鎮魂の隅田川―亡夫魄霊の姿・複式夢幻能―,生命としてのゴジラ―「抗核」と「故郷」―)という観点から話題を提供した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
これまで行なってきた研究の全体を整理し,まとめる作業を進めているが,研究内容の方向性を再検討したり,題材や論述の取捨選択等に時間が掛かっているため,遅れている状況が続いている。 また,一身上の事情により研究遂行上の困難が続いており,当初の計画より進捗状況は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で既に,ゴジラ映画史,及び,戦前の国策映画,戦後の1950~1960年代の日本映画を題材とし,そこに描かれた航空機,船舶,鉄道,都市及びその建造物,また,南洋の島々などを特定して分析することにより,(1)昭和の交通史・軍事史とその映画表象との関係,及び,(2)戦前の委任統治領南洋群島と帝都東京の歴史的・地理的関係と戦後に於けるその連続性/非連続性を明らかにし,それらの事実と照合しながら,銀幕の表象空間に再現された「場所」と「移動経路/手段」の特性を測り,描かれた「モノ」(物質文化),及び,地図上の地理的「位置」とその「交通」に着目した。 具体的には,(1)映画の中の東京と現実の東京の比較照合(ゴジラ映画が描き続けた主題でもある「東京」の地理的・歴史的背景の精査,街並み,鉄道線,橋梁,港湾等の変遷との相関関係),(2)ゴジラ映画の描く東京と文学に表現された東京(映像・文学・都市の交差の中で「東京」の比較文化史を考え,戦後日本に於ける「郷愁空間」という観点からの東京論),(3)「南洋憧憬」の研究(帝都東京との関係や,核兵器の戦後史を視野に入れながら,戦前・戦後の「南洋」とその交通経路の吟味),(4)東京と南洋を往復する郷愁の「帝国」(昭和史に於ける「帝国」の連続性─「東京」と「南洋」の郷愁空間の往還─という観点から,大東亜戦争や原水爆の記憶が往復する戦後文化史としての「ゴジラ映画史50年」の比較文化史)から構成される。 今後は,書籍の刊行等を目指して,これらの研究全体をまとめる作業を行なう。
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Causes of Carryover |
前項「現在までの達成度」で遅れている理由にも記したように,これまで行なってきた研究の全体を整理し,まとめる作業に時間が掛かっているため遅れており,その状況が現在まで続いているため,未使用額が発生した。 また,一身上の事情により当初予定していた東京への出張等が思うに任せず,研究遂行上の困難が続いており,当初の計画が実施できなかったため,予算に余りが生じた。そのため,期間を延長することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
東京や昭和史(軍事・交通・映画など)に関連する資料・図書,及び,DVDなどの映像資料などを購入する。また,現地での実地調査と資料調査(東京都立中央図書館等)のための東京出張旅費に充てることとしたい。 また,ゴジラと戦後日本の原子核エネルギー表象について,新潟大学に於いて研究会を開催する予定である。
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Research Products
(1 results)