2012 Fiscal Year Research-status Report
20世紀初頭の英語圏における日本演劇の上演と相互交渉の調査―郡虎彦と菊池寛を軸に
Project/Area Number |
23520427
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
鈴木 暁世 福岡女子大学, 国際文理学部, 講師 (60432530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 順光 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (80334613)
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Keywords | 国際情報交流 / 交流史 / 近代文学 / 比較文学 / 近代演劇 / 翻訳 / ジャポニスム / アイルランド |
Research Abstract |
本年度は、研究代表者と分担者がイギリスと日本における調査を協力、あるいは手分けして行った。その成果は以下の4点に集約できる。 【1. 資料の収集と整理】昨年度のロンドンとダブリンにおける調査において収集した資料の整理と分析を、以下の方法で行った。a)郡虎彦の戯曲がロンドンで上演された際の受容言説についての整理と考察(研究成果3)、b)W. B. イェイツによる菊池寛評価と戯曲上演時の調査。特に上演パンフレットの挿絵画家ハリー・クラークにおけるジャポニスムに関する研究(研究成果5)、c)菊池寛、郡虎彦による西洋演劇受容に関する考察(研究成果2)、d)日本演劇が英語圏で受容された背景としてのジャポニスム(研究成果1, 4)。 【2. ワークショップ・シンポジウムの企画】関連分野の専門家を招へいして(a)ワークショップ「西洋から見た日本の「近代化」―英語圏を中心に―」と(b)シンポジウム「英国、インド、日本をめぐるアジア主義とジャポニスム」を開催し研究成果を発表した。関連分野専門家による研究発表と議論・助言・研究協力を得て、本研究課題に関する知見と情報を得ることに努めた。 【3.研究成果】論文(1)「20世紀初頭のアイルランドにおける日本の染型紙の受容と展開」、口頭発表(2)「日本近代文学におけるアイルランド文学受容―翻訳と紹介記事をめぐって―」、(3)「20世紀初頭の英国演劇界における日本とギリシアの結合―郡虎彦とD. H. ロレンスをめぐって―」(4)「20世紀初頭のアイルランドにおける型紙の受容と展開」(5)「20世紀初頭のアイルランドにおけるジャポニスム―ハリー・クラークを中心として―」において研究成果を発表した。さらに継続して成果を発表していきたい。 【4. 書籍の購入】日本におけるアイルランド演劇受容および、英語圏における日本演劇受容と関わる資料や研究書を購入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
鈴木(研究代表者)は、平成24年度は、当初平成23年度に予定されていた研究計画を推進した。その理由は、平成23年度は「日本学術振興会 頭脳循環を活性化する若手研究者戦略的海外派遣プログラム」においてロンドンに派遣されていた(派遣期間2011年1月29日~2012年3月23日)ため、頭脳循環プロジェクトに専念する義務があり、補助事業の計画を1年間中断せざるを得ず、平成23年度に支出実績がないためである。 (1)ロンドン・ダブリンで一年間研究に専念できた相乗効果により、イギリス及びアイルランドにおける日本演劇の受容について、当初予定していた以上の知見を得ることが出来た。そのため、郡虎彦に関する資料を新たに発見、整理した。 (2)研究成果を発表するため、関連分野の専門家を招聘して(a)ワークショップ「西洋から見た日本の「近代化」―英語圏を中心に―」(8月)と(b)シンポジウム「英国、インド、日本をめぐるアジア主義とジャポニスム」(10月)を二回開催し、研究代表者と研究分担者が各々研究成果を発表した。さらに、関連分野専門家による研究発表と助言・協力を得て、研究の視野を拡げ、深度を深めることができた。上記の機会に加えて、その他にも研究打ち合わせを東京で一回(6月)、三重で一回(9月)、大阪で二回(3月)行い、密接な研究連携体制のもと研究成果を共有した。 (3)学会発表(c)「20世紀初頭のアイルランドにおける型紙の受容と展開」(9月)、(d)「日本近代文学におけるアイルランド文学受容―翻訳と紹介記事をめぐって―」(3月)を行い、科学研究費補助金による研究成果を発表した。 (4)科学研究費補助金を利用し、日本におけるアイルランド演劇受容と相互交渉に関わる資料や研究書を購入した。本年度は特に、郡虎彦と菊池寛に関する基礎的資料・文献類を重点的に購入した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に引き続き、同様の研究方法により、同様の作業が進められる。鈴木暁世(研究代表者)と橋本順光(研究分担者)が調査結果及び研究成果を共有し、日本、ロンドン及びダブリンにおける調査と成果の発表に力点を置く。 【1. 基本的研究体制】鈴木は前年度に整理した郡虎彦関連の文献を分析し、研究成果を発表する。橋本は、19世紀末から20世紀初頭にかけての日本文化に関する記事などから、郡らの日本戯曲の受容の背景についての広範な調査を行う。 【2. 一次資料の整理】前年度に引き続き、適宜謝金を使用する形で研究補助者を適宜雇用し、新聞・雑誌などの一時資料の整理・分析を行い、研究成果を発表する。 【3. 一時資料の分析と注釈】一次資料の特徴と劇評の分析、考察を行い、注釈作業を行う。さらに、20世紀初頭のファッションにおけるジャポニスムを研究している山田晃子(研究協力者)と連携し、郡虎彦や菊池寛の日本演劇の上演時の舞台装置・衣装に関する研究を行う。 【4. 成果の中間集約及び研究成果発表】研究成果発表会を開催し、研究成果を中間集約する。必要に応じ、関連分野の研究者からの助言・協力を仰ぎ、ワークショップを企画・申請する。また各自学会において研究成果を発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. 本研究課題では、日本近代文学・演劇学及び近代イギリス・アイルランド文学・演劇学関連の基本的文献に加えて、英語圏におけるジャポニスム関連書籍が必要であり、計上した。 2. 英語圏での調査については、実際に資料を所有している大英図書館、アイルランド国立図書館、アベイ座、及び大学・研究機関に赴き、その文献を調査するために必須である。また、日本側の資料においても郡虎彦ら英語圏への日本文化発信者に関しては、十分に研究されていないだけでなく、復刻もされていない。調査のために必要な旅費を計上した。 3. 学会等において研究成果を発表する際の旅費を計上した。また、本研究課題の研究成果発表会としてワークショップやシンポジウムを開催するにあたり、発表者の旅費、招聘する研究者への謝金が必要である。 4. アイリッシュ・スタディーズの最近の動向を知り、英語圏に収蔵の一次資料の情報を得るためにも、専門家を訪問、あるいは招聘して議論を行う必要がある。その際には、旅費としても相応の謝金が必要となることが見込まれる。また、謝金に関しては、英語母語話者に執筆した英語論文を校正してもらうために必要である。 5. 印刷・通信費に関しては、多くの演劇に関する上演パンフレット、新聞・雑誌に掲載された書評・劇評をコピーあるいはCD-ROMに複写するための経費として必要である。 6.このように相当な数と量の一次文献、二次文献、複写物を必要とするため、しかるべき謝金を使用した形での、それらの整理と保存が見込まれる。
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Research Products
(7 results)