2011 Fiscal Year Research-status Report
中世北インドの詩人の系譜―ヒンドゥー教詩人とイスラム教詩人の交流と葛藤―
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23520429
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長崎 広子 大阪大学, 世界言語研究センター, 准教授 (70362738)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | ヒンディー文学 / 国際情報交流 / バクティ |
Research Abstract |
ヒンドゥーとムスリムの詩人の交流伝承を考察するための準備段階として、研究に必要な資料とテキストの収集、データの蓄積を行った。1) 本年度は特にムスリム詩人ラヒームとラスカーンを中心にテキストの収集を行った。インドでの現地調査で、ベナレスのナーガリー文字普及協会図書館所蔵の校訂本を数点と、現地のパンディットの個人蔵のテキストを数点入手することができた。ラスカーンについては、校訂本ごとに収められている詩の数に増減があり、内容を含めて検討を要することが判明した。ラヒームの電子テキストの作成を開始したが、ラスカーンの電子テキストは次年度以降にテキストの内容を検討したうえで、開始することにした。ラヒームの電子テキストの公開は次年度に行う。2) トゥルシーダースとラヒームとラスカーンに関する伝記および伝承の整理を行った。特にヒンドゥー教ヴィシュヌ派ラーマ信仰の詩人トゥルシーダースの伝記については、弟子によるものとされるMul Gosain Caritaがゴーラクプルのヒンドゥー経典の出版社であるギータープレスに残されていることを知り、現地調査でそのコピーを入手することができた。その内容は、プリヤーダースによる『信徒列伝』の注釈版のトゥルシーダースの伝記部分と共通する逸話がある一方で、他の伝記にはない逸話があることが分かった。ムスリム詩人ラスカーンについては、実像は知られていないが、宗派の聖者伝Caurasi Vaishnavon ki Vartaと現地調査で入手した校訂本の前書きに記されていた内容から、これまで知られていなかった逸話が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は初年度であるため、研究の目的達成には至っていないが、交付申請書に記載した本年度の研究予定はほぼ達成した。電子テキストの作成は一部開始したが、基礎となる校訂本に差異があることが判明したラスカーンのテキスト作成は、校訂本の内容を検討したうえで、次年度以降にすることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査で得られたテキストをもとに、電子テキストを作成し、インド・アーリア固有の語彙とサンスクリットの借用語、アラビア・ペルシア系語彙の分布データを作成する。詩人ごとのデータの差を検討し、宗教と文体との関係を考察する。現地調査を実施し、四人の詩人の伝記に関する口承伝承を収集する。研究成果を公開する目的で、専用サーバー上では電子テキストを公開し、学会発表やテキストの翻訳発表を積極的に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内と海外の学会出張旅費。インドでの現地調査の旅費。書籍および資料代金。電子テキストの入力のための、謝金。
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Research Products
(2 results)