2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520431
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
釜谷 武志 神戸大学, 大学院人文学研究科, 教授 (30152838)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 末喜 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (60141850)
林 香奈 京都府立大学, 文学部, 准教授 (30272933)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 中国 / タブー / 恋愛感情 |
Research Abstract |
中国古典文学作品において、伝統的な詩文を主な対象として、表現面と内容面の双方からタブーとなっている事例を捜求して、いかなる法則性があるのかを探求した。 漢代の詩や賦には絶望的な悲哀の感情が支配的であるが、その根底には生死についての広義のタブーが存在していた。当該の人間の行為そのものにとどまらず、親や祖先の行為が善悪双方において子孫に影響を及ぼすとの考えであって、既に定められたものであるから、本人の努力ではどうすることもできず、ゆえに悲哀に沈まざるを得なくなる。こうした考えは通常は表面に出てこないため把握しがたく、表面にあらわれ出た悲哀の感情に目を奪われがちである。しかし、このように考えることで、表面に見える現象の由来と背景を明確に理解することが可能である。 中国古典の文学批評において、たとえば詩や賦において、その娯楽作用を認めながらも、諷諫作用がより強調されてきた。それは時として強引で唐突過ぎることがあるが、その一因として男女の愛情に関するタブーの意識があげられる。『詩経』で男女の恋愛をうたっていることが明らかな詩に対しても、漢代以降、君臣関係を喩えた隠喩表現であると解釈されてきた。それは儒教的な政治観、忠義観にもとづくものではあるが、そうした解釈を促した要因として男女の問題に関するタブーがある。そのために、文学批評においてもタブーを避けるために別の問題をもち出して、諷諫作用という逆方向のベクトルで解釈しようとした。このようにタブーの問題に着目することで、文学批評上の諸問題もより明晰に理解することが可能になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タブーの事例のうち、死をめぐる問題、男女間の恋愛の問題、杜甫の詩の表現の問題について、具体的な例に即して考察を行い、その背景の一部を明らかにすることができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に得られた研究成果をもとにして、それを通時的に、あるいは対象範囲をさらに拡大して検証し、法則性を抽出できるかを確認する。 死をめぐるタブーに加えて、空間意識の問題についても宗教的な背景から考察を進める。 ジェンダー性の研究が若干不十分であったため、この問題について集中的に研究を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は購入を予定していた外国書籍の一部が入手できなかった。それらを購入するとともに、参照すべき文献資料が不十分であるため、これを補う。 収集した資料の整理と分析の作業に必要な補助要員を雇うための謝金に用いる。 研究成果の一部を発表する機会があれば、海外旅費として使用する。
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[Journal Article] 南宋雑事詩2012
Author(s)
林香奈
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Journal Title
平成23年度京都府立公立大学法人 地域関連課題等研究支援費研究成果報告書 『京都府立総合資料館蔵 古典籍についての文献調査研究』
Volume: 1
Pages: 67-72
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[Journal Article] 百美新詠図伝2012
Author(s)
林香奈
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Journal Title
平成23年度京都府立公立大学法人 地域関連課題等研究支援費研究成果報告書 『京都府立総合資料館蔵 古典籍についての文献調査研究』
Volume: 1
Pages: 73-79
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