2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520431
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
釜谷 武志 神戸大学, その他の研究科, 教授 (30152838)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 末喜 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (60141850)
林 香奈 京都府立大学, 文学部, 准教授 (30272933)
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Keywords | 中国古典 |
Research Abstract |
中国古典文学作品において、伝統的な詩文を対象として、表現面と内容面の双方からタブーとなっている事例を捜求して、それらの間にいかなる法則性があるのかについて考察した。 漢代の詩や賦において悲哀の感情が支配的である根底には、生死についての広義のタブーが存在しているが、それが六朝においてどのように展開するのかを、陶淵明を例にして探求した。従前の詩においては死者をとむらう場合に、空虚感を感じさせる空間を描くことが多かったのに対し、陶淵明は空間を描くにしてもその中で視線の対象が次々と変わっていって、それが結果として悲しみのみならず、伸びやかさをも感じさせることに成功している。この点は宋代の詩人の詩風と共通していて、それが同時代人には文学的価値がさほど評価されずに、数百年後の宋代に至って初めて陶淵明の真価が評価されることになる最も大きな理由といえる。 陶淵明は詩の中に、多くの俗語・口語的表現を用いている。当時は、こうした語彙を詩にもちこむことは一種のタブーであった。陶淵明がタブーをうちやぶることができたのは、上記の視線の移動といったのびやかさと無関係ではないし、かかる語彙の使用も宋代の詩人と共通するところである。 唐代文学を代表する杜甫も、従来の詩のタブーを大きく破った詩人である。例えば、稲米を白く炊ぐと表現する例は、それ以前には見られない。こうした点が杜甫の独創として挙げられる。また、同じく唐代文学を代表する白居易も、雕蟲の戯なる表現を用いている。雕蟲の技や芸でなしに、戯なる語を使う点にも、タブーを打ち破る白居易の特性がうかがえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
古典文学作品に見られるタブーの事例のうち、死をめぐる問題、日常生活を詩に描写することの問題等について、陶淵明・杜甫・白居易といった中国文学を代表する詩人の具体的な作品に即して考察を行い、その背景の一部を明らかにすることができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に得られた研究成果をもとに、さらに対象範囲を拡大して検証し、一般的な法則性を導き出せるかを確認する。 死をめぐるタブーに加えて、罪の意識を、宗教的な背景から考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は購入を予定していた外国書籍の一部が入手できなかった。それらを購入するとともに、罪や罰に関する資料を入手して補う。 収集した資料の整理と分析に必要な補助要員を雇用するための謝金に用いる。 また、研究成果を翻訳するための謝金に用いる。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] 雕蟲考2013
Author(s)
林香奈
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Journal Title
「異文化共生学」の構築―異文化の接触・交渉・共存をめぐる総合的研究』(平成24(2012)年度 京都府立大学 重点戦略研究費 研究成果報告書 研究代表者:岡本隆司)
Volume: 平成24(2012)年度
Pages: 13-25
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