2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520432
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
大平 幸代 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (90351725)
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Keywords | 中国文学 / 魏晋南北朝 / 博物志 / 張華 |
Research Abstract |
平成24年度の研究課題は、「賦注の検討――学問と賦作の相互作用を探る」。当初の計画では、賦の注釈の検討を中心にすえる予定であったが、注釈(およびその土台となる博物の学)がうまれる状況を明らかにすることが先決であると考え、「博物」をめぐる説話の考察に比重を移した。具体的な成果は以下の通り。(なお、賦注についても、台湾国家図書館等で文献調査を行い、引き続き『文選』所収の賦注の整理・検討を行っている。) 1.「地方の事物に対する博識」を示す説話の成立および変容の考察 左思「三都賦」がつくられた西晋のころには、呉や蜀などの珍奇な事物をめぐる話が多数収集され、中央に集約されていったことが予想される。その中でも、地方の名士の庇護者であった張華は、『博物志』の編者としても知られ、博物学の展開に大きな役割を果たしたものと思われる。しかし、『博物志』はすでに散佚しており、当時の張華周辺の学問状況も明らかにはしがたい。そこで、東晋以後における地方志や別伝中の「張華」像を検討することによって、地方で「張華と地方の名士をめぐる説話」がいかに語られ、変容していったのかを明らかにし、論稿「博物の士「張華」像のゆらぎ―雷煥とのかかわりをめぐって」(『叙説』40)として発表した。 2.地方志という言説空間の検討 地方における言説の記録の場としての「方志」に注目し、地方の名士や隠士と地方長官とのつながり、記録の意図について考察した。その成果(中間報告)として、六朝学術学会第26回例会にて、「晋宋の志怪と地方の伝承--廟墓にこめられた願い、雷次宗『豫章記』など荊楚の方志を事例として」と題する口頭発表をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地方における博物説話の検討に重点を置いたため、地方(とりわけ荊楚地域)における博物者(地方の名士)の語られ方、地方における語り(あるいは記録)の担い手についての検討は予定よりも進んだ。一方、賦やその注釈学における博物学の影響についてはいまだ論稿を発表する段階には至っておらず、資料整理に留まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
モノ、地方、語り、記録をキーワードに、晋宋期の文人が「異なるモノ/空間」をいかに表現しようとしたのか、「博物」であることにいかなる価値を認めようとしたのかを探りたい。そこで、以下の二方面からのアプローチによって、文人の博物観に迫ることを目指す。 1.地方の「異物」をめぐる語り:地方における記録のありよう、すなわち、どのような人がいかなる意味をこめて記録したのかを、方志や史書などの記述から読み取る。その手始めとして、24年度におこなった雷次宗『豫章記』等をめぐる口頭発表の再検討を行う。 2.韻文(賦・賛)によるモノの神秘の表徴:図や解説(あるいは注)による具象化と表裏の関係にある賛、賦がいかに「神」を表現しようとしているのかを考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「次年度使用額」が生じたのは、購入予定の中国書籍の入荷が遅れたためである。「次年度使用額」および25年度分助成金は、主に、書籍費(魏晋南北朝文学・思想・歴史関連書籍)および資料整理のための謝金、文献調査・発表用の旅費にあてる予定である。
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