2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520432
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
大平 幸代 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (90351725)
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Keywords | 中国文学 / 魏晋南北朝 / 博物学 / 地方志 |
Research Abstract |
平成25年度は、前年度に引き続き、地方志にみえる博物記事を中心に考察を行った。主な成果はつぎの通りである。 (1)荊楚地域の地方志の整理:長江中流域の荊楚地域においては、先賢伝や異物志にやや遅れて、地方の山水や物産・異聞などを記す地理書が盛んに編纂されるようになった。中でも、東晋から劉宋にかけての時期には、多くの地理書が編まれ、その後の地方志の基本的なスタイルが形成された。注目すべきは、地理書の編纂に地方の著名文人が深くかかわっており、廟の祭祀や風俗のとりしまりを行う州郡の官吏の活動と不可分の関係に点である。本年度は、それら東晋から宋にかけての地理書のうち、『湘中記』『南康記』『豫章記』『始興記』などについて、収集整理の作業をおこなった。その上で、先行研究を参照しつつ、作者やその継承関係についての考察を行い、地方文人による地理書編纂の状況の一端を明らかにすることを試みた。 (2)荊楚地域の地方志にみえる山水と怪異に関する検討:『湘中記』『荊州記』などにあらわれる山水描写が、志怪書に取り入れられていくさまについて、先行研究の補足を行うとともに、あらたな推定をおこなった。とくに、山水描写と神怪事象の両面による神秘空間の表象について考察を進めた。 ただし、これらの考察の妥当性を十分にうらづけるには、まだ資料や論証が不足しており、年度内に公表するには至らなかった。現在、地方志にあらわれた山水や怪異の記述と志怪書編纂との関連に焦点をあてた論考を発表すべく準備している。
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