2014 Fiscal Year Annual Research Report
中国近現代における宣講活動による民衆教化に関する調査研究
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23520436
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
阿部 泰記 山口大学, 人文学部, 教授 (40091227)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 聖諭宣講 / 聖諭 / 宣講 / 『躋春台』 / 「漢川善書」 / 『宣講集要』 / 「案証」 / 「西南官話」 |
Outline of Annual Research Achievements |
皇帝の訓諭である「聖諭」を宣読し講説して民衆を教化する「聖諭宣講」は、民衆に親近感を持たせるため、近代に至って十言句の通俗詩歌を取り入れた説唱(語り物)形式の民間芸能に変容していった。従来、小説と考えられていた『躋春台』という作品も、実は説唱形式の「聖諭宣講」のテキストであった。 そうした説唱形式の「聖諭宣講」は、現代では湖北省の「漢川善書」にしか伝承されていないが、もともと全国に分布して民衆教化に奏功していたと思われる。そのことは従来、具体的に明らかにされてこなかったが、この研究では、全国各地で刊行された説唱形式のテキストを収集することによって、説唱形式の「聖諭宣講」が全国的に分布していることを明らかにした。またその源流が四川省にあることを、早期のテキスト『宣講集要』が福建省で復刻されながら、四川省の方言である「西南官話」を用られていることから明らかにした。 また「聖諭宣講」のテキストは、もともと「六諭」(「聖諭六訓」)や「聖諭十六条」によって「案証」(故事)を分類して収録していたが、聴衆を獲得するために、次第に物語性を重視して「聖諭」分類に拘らないテキストが編纂されるようになった。『躋春台』十巻四十話はこの類のテキストであり、「漢川善書」のテキストもおおむねこれに類する。 「聖諭宣講」は近代に至って、大鼓・唸歌などの地方芸能に採り入れられた。この研究では、現地調査によって、湖北大鼓・れい州大鼓・山東大鼓・台湾唸歌・布袋戯などの形式による「宣講」の存在を明らかにし、近現代においては、「聖諭」のみならず、「政策」宣講が行われるようになったことも具体的に明らかにした。
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Research Products
(6 results)