2011 Fiscal Year Research-status Report
近代雑誌メディア文化におけるジェンダーと異文化表象の編成に関する日露比較研究
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23520438
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
溝渕 園子 熊本大学, 文学部, 准教授 (40332861)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 日本 / 近代 / 雑誌 / メディア / ジェンダー / 異文化表象 / ロシア |
Research Abstract |
本研究の目的は、(1)20世紀初頭(明治後期から昭和前期にかけて)の少女の雑誌メディア文化を取り上げ、そこに見られるロシア表象の特徴を、少年雑誌におけるロシア表象を参照することによって明確にし、その見地から、近代のジェンダー化されたテクストとしてのロシア表象をめぐる諸問題について考察すること、また(2)同時代のロシアの児童雑誌における日本表象を異文化受容の観点から検討しつつ、日露双方の雑誌メディア文化が経験した、異文化表象を成立させる枠組みの構築及びその再生産の構造を明らかにすること、である。 平成23年度の研究実施計画では、ジェンダー化されたメディア・テクストとしての少女雑誌におけるロシア表象の量的分析、及び文化的コンテクストをふまえた考察を行うことに主眼をおいた。 まず、研究の視点や軸を定めるため、本研究代表者が過去に集積した、日露戦争期のデータの再検証を行い、日露戦争後から明治末期までのデータを補充し、収集データを各カテゴリー別に分類した上で、カテゴリー別にロシアの言説の数量をはかり、頻出ワードを抽出した。それらを手がかりに、フィクション、ルポルタージュ等の言説により、いかなるロシア表象が形成されるのかについて考察した。本年度実施した成果は、別記の通り、論文の形で公表されている。これは、明治末期以降のデータ収集及び分析方法、考察の軸を定める上で基礎となるものである。その点において、研究目的の遂行上、重要な意味を持つ。 次に、同時期の少年雑誌についても同様の方法で検討を開始し、収集データの整理を行った。分析を進める過程で、少女雑誌との対比の論点が明瞭になりつつある。これは、本研究課題であるところのジェンダー化されたテクストとしてのロシア表象を考察する上で、不可欠の成果となりうるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度の研究計画では、昭和前期までの少女雑誌のロシア表象に関するデータ収集・量的分析を完了させ、集積データを日露戦争前後、第一次世界大戦前後、第二次世界大戦前後の三期に分け、代表的な少年雑誌におけるロシア表象のデータも収集することとしていた。 だが、平成23年度に実施した成果では、まず研究の方向性を明確にするため、明治末期までを一つの区切りとし、分析及び考察を中心に行った。そのため、明治後期から昭和前期にかけてのロシア表象の全体像を把握するには至らなかった。しかしながら、日露戦争前後の少女雑誌に限定されるものではあるものの、平成24年度に予定していたディスコース分析については、すでに実施している。 また、少年雑誌の種類及び巻号が少女雑誌より多く、予想以上にデータの量的分析の時間を要した。少女雑誌のデータと対比し、ロシアの何が描かれ、何が描かれていないのかという論点は明らかになりつつあるが、そのコードをめぐる考察には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の実施状況をふまえ、今後継続分のデータ集積の効率を上げる工夫を行う。平成23年度は作業効率化に主眼をおいた研究費の使用をはかり、すでにその準備は整えられている。 具体的な方策としては、平成23年度に購入した高性能のコンピュータの活用によって、データ分析の速度を上げる。 また、調査の作業においては、少女雑誌資料が複写できないため、書き写し作業の時間を考慮する必要がある。これについては、調査補助の依頼等の対処によって、数量調査の効率化を図りたい。そのための必要経費の一部として、次年度使用額14,144円を計上している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、数量的データ収集を平成23年度から継続し、データの補充を行いつつ、ディスコース分析に基づいた、少女雑誌におけるロシア像形成の枠組みの構築に関する考察を行う。その上で、ロシアの児童雑誌における日本像についても同様に検証し、当時の日本とロシアにおける雑誌メディアの中で、いかなる異文化表象の問題が生じていたかに関する検討を開始する。 まず、国内の調査については、本研究代表者の所属機関の変更に伴い、日本有数の少女雑誌コレクションを所蔵する、熊本県菊陽町図書館での調査のために必要な旅費が、新たに生じることとなった。次年度使用額をその一部に充てる。 次に、菊陽町図書館所蔵の少女雑誌の欠号分については、東京や大阪の公的図書館での調査によって補充することが不可欠である。この調査の旅費及びそこで得られた成果の発表にかかる費用として、研究費の使用を見込んでいる。 さらに、日露比較という観点から、ロシアの児童雑誌における日本表象についても、日本で行ったものと同様の調査・分析を計画している。ロシア現地(モスクワ)での調査が必要であるため、そのための旅費等に研究費を使用する予定である。
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