2012 Fiscal Year Research-status Report
近代雑誌メディア文化におけるジェンダーと異文化表象の編成に関する日露比較研究
Project/Area Number |
23520438
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
溝渕 園子 広島大学, 文学研究科, 准教授 (40332861)
|
Keywords | 日本 / 近代 / 雑誌 / メディア / ジェンダー / 異文化表象 / ロシア |
Research Abstract |
本研究の目的は、(1)20世紀初頭(明治後期から昭和前期にかけて)の少女雑誌を一つのメディア文化としてとらえ、そこに見られるロシア表象の特徴を、少年雑誌の場合を参照することによって明確にし、その見地から近代のジェンダー化されたテクストとしてのロシア表象をめぐる諸問題について考察すること、(2)同時代のロシアの児童雑誌における日本表象を異文化受容の観点から検討しつつ、日露双方の雑誌文化が経験した、異文化表象を成立させる枠組みの構築及びその再生産の構造を明らかにすること、以上2点である。 平成24年度当初の研究実施計画では、少女雑誌のロシア表象について、数量的分析をもとにディスコース分析方法を援用し、異文化を形象化した一形態であるロシア像が、少女雑誌というメディア・テクストにおいていかなる枠組みを構築しているかを、少年雑誌の場合と対比させながら明確にしていくことに主眼をおいていた。その際、国民的記憶の公的領域である教科書におけるロシア像も視野に入れた分析を行っていく計画であった。 本年度実施した成果としては、明治から昭和初期にかけての多種の少女雑誌からロシア表象を網羅的に抽出したものを整理し、その特徴を把握するとともに、それらの数量的分析を行うことによってロシア表象を成立させる枠組みについて、その傾向をとらえたことである。国際児童文学館及び菊陽町図書館所蔵の少女雑誌からのデータは80%程度収集できたものの、完成には至っておらず、少年雑誌や教科書も含め、残りのデータ分析を待って、次年度に論文の形として公表することとした。また、9月にロシア(モスクワ)での児童雑誌のデータ収集を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、明治から昭和初期にかけての少女雑誌からロシア表象を80%程度抽出したが、研究計画で考察対象として予定していた少女雑誌以外にも、大阪府立図書館及び菊陽町図書館所蔵の少女雑誌すべてに目を通しているため、作業量が増大し、データベースを完成させることができなかった。また、ロシア(モスクワ)での児童雑誌の調査も、予想以上に手間取ったため、完遂に至らなかった。しかしながら、これらのデータを補充しデータベースが完成されれば、数量的分析によるロシア表象の全体像の提示が可能である。また、ディスコース分析については、平成23年度に明治期までの分を完了しているため、大正期・昭和前期の分を引き続き行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の実施状況をふまえ、今後継続分のデータ集積の効率を一層上げていく必要がある。平成25年度は、作業の効率化に重点をおいた研究費の使用につとめる。 具体的な方策としては、完成に近づいている少女雑誌のデータベース作成の補助を、本年度より人員を増やして依頼する等の対処によって効率化に努める。また、ロシアの児童雑誌や日本の教科書のデータの補充にあたっても、調査補助を依頼し、研究遂行の迅速化を図る。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、本研究の最終年度にあたるため、効率よくデータを整理し、論文の公表を行う。 まず、前年度に作成した少女雑誌のロシア表象にかんするデータベースが中途であるため、これを今年度補充するデータを合わせて完成させるにあたり、複写料と相当の調査補助が必要であるため、その依頼等に研究費を充てる。 また、少女雑誌の未収集データの収集と少年雑誌のデータ補充のために、大阪府立中央図書館国際児童文学館での調査が不可欠である。この調査の旅費及び得られた成果の発表にかかる費用として、研究費の使用を見込んでいる。 さらに、日露比較という観点から、ロシアの児童雑誌における日本表象についても、ロシア(モスクワ)で更なる調査が欠かせず、そのための旅費等に研究費を使用する予定である。
|