2012 Fiscal Year Research-status Report
当代散文の研究――記憶の中の中国革命史再構築の試み
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23520444
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
楠原 俊代 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 教授 (30131288)
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Keywords | 中国文学 / 中国革命史 / 文化大革命 / 中共党史 / 韋君宜 / 『思痛録』 / 国際情報交換 / 中国 |
Research Abstract |
本研究は、新中国成立以後、半世紀余の歴史を「反思(反省・振り返って考えなおす)」する、回想録を含む当代散文を収集し、個人が歴史にいかに関与しうるのか、個人の証言(記憶)は歴史の中でいかなる意味を持ちうるのか、また文学(散文)作品が歴史に対していかなる役割を果たしうるのかについて考察しながら、文献の読解を進めるとともに、平成 19~21年度に遂行した研究「韋君宜から見た中国革命史再構築の試み――作家、編集者、革命家の視点から」で得られた「中国革命史」と丹念につきあわせて分析することによって、さらに精度の高い「中国革命史」の再構築を試みるものである。 本年度は、研究計画・方法に記したとおり、記憶の中の中国革命史、文革期(1966~76年)部分の再構築に取り組み、その成果に基づき、11月30日には、京都大学人文科学研究所附属現代中国研究センターの「現代中国文化の深層構造」共同研究班(班長: 石川禎浩、京都大学人文科学研究所本館)において、「当代散文の研究――記憶の中の中国革命史再構築の試み」の題目で研究報告をおこなった。また2012年3月末に京都大学人文科学研究所附属現代中国研究センターの「長江流域社会の歴史景観」共同研究班(班長:森時彦)に提出した論文「韋君宜と中共湖北省委員会」は、査読を経た後に修正を加え、論文標題も「武漢時期の韋君宜」に変えた。本論文は同班の研究報告論文集に収録され、2013年6月に刊行予定である。 他には、拙論「韋君宜と『文芸学習』について」の中国語版「韋君宜与『文芸学習』雑誌」が2013年3月に中国で出版された(石川禎浩主編、袁広泉訳『二十世紀中国的社会与文化』、北京:社会科学文献出版社、125~167頁、ISBN:978-7-5097-4269-3)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
9月20日北京に出張する予定であったが、中国における反日活動が激化し、9月18日夕刻には、中国情勢に不安を感じてのキャンセルは取消料が不要との連絡が旅行業者からあったため、出張をキャンセルした。 しかし、資料の収集と文献の読解・分析の点では順調に進展し、その成果にもとづき11月30日には、「当代散文の研究――記憶の中の中国革命史再構築の試み」の題目で研究報告をおこなった。また2012年3月末に京都大学人文科学研究所附属現代中国研究センターの「長江流域社会の歴史景観」共同研究班(班長:森時彦)に提出した論文「韋君宜と中共湖北省委員会」は、査読を経た後に修正を加え、論文標題も「武漢時期の韋君宜」に変えた。本論文は同班の研究報告論文集に収録され、2013年6月に刊行予定である。拙論「韋君宜と『文芸学習』について」の中国語版「韋君宜与『文芸学習』雑誌」は、2013年3月に中国で出版されたが、校正の際に中国語訳の誤りと訳出の遺漏箇所を修正することができた。 研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度に使用する予定の研究費が生じたのは、中国における反日活動が激化し、キャンセル料が不要という事態が生じたことにより、出張をキャンセルしたためである。次年度はできれば中国に出張し、資料収集と関係者へのインタビューをおこなうとともに、研究者と会い、意見交換をおこなう。 また、「研究計画・方法」欄に記したとおり、平成23、24年度の研究成果をふまえた上で、ひきつづき当代散文と国内外の中国革命史に関する資料を収集するとともに、当代散文の研究を通して、記憶の中の中国革命史、改革開放期(1976年以降)部分の再構築に取り組む。その際には、平成19~21年度の研究「韋君宜から見た中国革命史再構築の試み」で得られた「中国革命史」と丹念につきあわせて分析することによって、さらに精度の高い「中国革命史」の再構築を試みる。そしてこれらの研究成果と、すでに紀要に発表した韋君宜の回想録『思痛録』を整理して、あわせて著書として刊行するための準備をおこない、平成26年度科学研究費補助金学術図書の交付を申請する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「研究計画・方法」欄に記したとおり、回想録を含む当代散文と、国内外の中国革命史関係図書を収集する。次年度はできれば中国に出張し、資料収集と関係者へのインタビューをおこなうとともに、研究者と会い、意見交換をおこなう。 また、関係資料の読解を進めるとともに、平成19~21年度の研究「韋君宜から見た中国革命史再構築の試み」で得られた「中国革命史」と丹念につきあわせて分析することによって、さらに精度の高い「中国革命史」の再構築を試みる。
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