2013 Fiscal Year Annual Research Report
中国シェイクスピア受容史の基礎的研究-民国期を中心に
Project/Area Number |
23520447
|
Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
瀬戸 宏 摂南大学, 外国語学部, 教授 (80187864)
|
Keywords | シェイクスピア / 上海戯劇協社 / 国立劇専 / 上海業余実験劇団 / 中国話劇 / ヴェニスの商人 / ハムレット / ロミオとジュリエット |
Research Abstract |
昨年度に口頭発表した上海戯劇協社『ヴェニスの商人』公演(1930年)、国立劇専『ハムレット』公演(1942年)、について引き続き研究し、論文化し公開した。 上海戯劇協社『ヴェニスの商人』公演(1930年)は中国最初の厳格な『ヴェニスの商人』上演であるが、翻案劇ではない厳格な翻訳劇上演としても中国で最も早い上演の一つでありその意義はこれまで考えられていたよりも大きいことを明らかにした。『ヴェニスの商人』は、清末から民国期の中国で最も好まれたシェイクスピア作品であるが、その理由は人肉質入れに対する興味、女性の能力発揮、裁判劇への関心であることを指摘した。 国立劇専『ハムレット』公演は中国最初の厳格な『ハムレット』上演であるが、抗日戦争(日中戦争)が長期化した中で、ハムレットの性格と抗日戦争中の知識人の役割を結びつけて解釈されたこと、現実は暗黒であるという認識が知識階層の中で一般化していく中でその認識が反映された上演であることを明らかにした。ニューヨークタイムスに掲載されたこの公演の劇評を探し出し、シェイクスピア研究者の協力を得て日本語化し主要部分を紹介した。上記二つの論文は、学術誌に発表した後、掲載誌の同意を得て瀬戸宏の個人HPに転載した。 上海業余実験劇団『ロミオとジュリエット』公演(1937年)について研究し、全国学会大会で口頭発表した。左翼系劇団である上海業余実験劇団が『ロミオとジュリエット』を上演するに至る過程を考察し、これまで成功とされてきたこの公演が、上演時の劇評では失敗とされていることを明らかにした。 このほか、1980年代以降の中国伝統演劇でのシェイクスピア上演の問題や日本のシェイクスピア受容についても研究し、関連する口頭発表をおこなった。
|
Research Products
(9 results)