2013 Fiscal Year Annual Research Report
近30年の台湾原住民族文学の発展と言語危機の中で作家達がみすえる民族の未来像研究
Project/Area Number |
23520448
|
Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
下村 作次郎 天理大学, 国際学部, 教授 (20148670)
|
Keywords | 台湾原住民族 / 台湾原住民文学 / 長編小説 / 言語危機 / 民族の未来像 / 平埔族 / 台湾 |
Research Abstract |
本研究は、30年を経た台湾原住民族文学の発展をまとめ、さらに急速に進む言語危機の中で次々と発表される長編小説では、作家たちが何を描き、民族の未来像をどのように見据えているのかを明らかにすることにあった。その研究課題を明らかにするために、初年度(2011年度)は、パタイやアオヴィニ・カドゥスガヌ、シャマン・ラポガンらの長編小説を読み、フィールドワークを通じて作品の舞台研究を進めた。その一方、権利促進運動が進む平埔族の研究として、台中を原郷とするパゼッヘの研究を進めた。その研究成果は『台湾平埔族、生活文化の記憶』(天理大学附属天理参考館、2012年)として刊行された。第二年目(2012年度)は、孫大川氏ら海外研究協力者と共に台湾原住民族の音楽と文化に関する国際シンポジウムを天理大学において開催し、約百人の参加をみた。さらに初年度より連携研究者・魚住悦子氏によって翻訳を進めてきた、プユマ族の作家パタイの『タマラカウ物語』(上下2巻、草風館、2012年)をその研究成果として上梓した。また研究代表者・下村作次郎は、孫大川氏(プユマ族)の『台湾エスニックマイノリティ文学論』(草風館、2012年)を編訳出版した。本書は原住民族の未来像を見据える研究の一環として着実な実績となった。 最終年度にあたる2013年度は、明治学院大学で「台湾原住民族との交流会」と共にワークショップを開催し、パタイ氏とアオヴィニ・カドゥスガヌ氏、そしてパタイ氏の母親で、著名な巫女の林丁貴さんを招聘することができた。同時に天理大学においても中国文化研究会で「台湾原住民族作家はいかにして物語を書くか」と題する講演会を開催した。なお、今年度は、先述した台湾原住民族の音楽と文化に関する国際シンポジウムの研究成果を『台湾原住民族の音楽と文化』(草風館、2013年)として公にし、大きな研究実績を残すことができた。
|