2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520449
|
Research Institution | Fukuyama Heisei University |
Principal Investigator |
市瀬 信子 福山平成大学, 経営学部, 教授 (50176294)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 杭州 / 揚州 / 天津 / 韓江雅集 / 沽上題襟集 |
Research Abstract |
揚州での杭州詩人集団の活動を調べるため、『韓江雅集』の複写と簡易データベース化に取り組んだ。これにより作品分析が可能になり、これまで研究されてこなかった乾隆期の唱和詩集の研究の基礎ができると思われる。中でも、杭州詩人集団が参加した折りの唱和詩をとりあげ、他の唱和詩と比較することで、杭州詩人の唱和詩の詩風が情緒的なものでなく、考証的なものにあるのではないかとの仮説をたてた。揚州詩壇については、揚州の商人の事業としての特色、また人脈のみが研究されて来たのに対し、杭州詩人集団、唱和詩の詩風の分析という新しい視点から見なおすことができた。 また揚州詩壇と比較するため、杭州詩人が同時期に活躍した天津詩壇についての研究を行った。天津の査氏水西荘で杭州の厲鶚が「絶妙好詞箋」を編纂したことは知られているが、それ以外の杭州詩人の活動は見逃されがちであった。そこで水西荘で編纂出版された唱和詩集「沽上題襟集」を調査し、収録される主要詩人8人のうち、査氏一族以外は、全て浙江人であり、また杭州詩人がその半分を占めていること、厲鶚、杭世駿等杭州詩人の詩も多く収録されており、天津詩壇の中心が杭州人であると認識されていたことを明らかにした。更に天津における編纂、出版事業に杭州人が多く関わっていることを明らかにした。このように杭州人たちの本拠地以外での活躍の詳細を示すことで、乾隆時代の杭州人がどのような存在としてみられていたかを考察した。 更に、これらの杭州詩人の後を受けて自ら南京で詩会を開いた杭州詩人袁枚の、隨園に於ける詩について考察を行った。袁枚は自己の隠遁について詠うが、同じく無官の杭州詩人集団の詩に隠遁を詠う作品がない。これらから杭州詩人の詩が集団から個人の詩へと変遷した迹を辿ることができると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究費の交付額確定時期が遅れたため、設備や資料を整えるに時間がかかったが、資料・設備を整えた後は、調査研究を進めることができ、最終的にはほぼ予定通りの研究を行うことができた。 韓江雅集の研究については、検索可能なデータベースとすることで、その後の分析研究を順調に進めることができた。 天津詩壇に関しては、日本にある関連資料に欠落部分があったことと、沽上題襟集という唱和詩集が日本に所蔵されていなかったため、調査研究が困難であったが、中国の図書館に直接調査に赴くほか、図書館から複写資料を取り寄せることで、その不足を補うことができた。それらの資料を用い、唱和詩集と、編纂事業について調査し、天津詩壇と杭州詩人に関わる年譜を作成した上で、その成果を予定通り学会で発表するに至った。
|
Strategy for Future Research Activity |
揚州、天津での唱和活動と比較するため、杭州詩人の本拠地である杭州の詩会の情況を調査検討する。 まず杭世駿を中心とする「南屏詩社」の実態を調査し、同時に杭州で詩会を開催した蔵書家たちとの唱和の状況を考察する。そのために、地方誌はじめ杭世駿の『道古堂集』、趙昱『春草園小記』などを調査する。同時に、杭州での詩会開催の場となった小山堂、瓶花斎に関する資料を地方誌などから収集し、これらの資料をもとに唱和のメンバーと詩会の開催実態、唱和詩の内容に関する調査を行う。 杭州詩壇の中には、蘇州の唱和のリーダーとして名声を博した周京もおり、周京の活動からも、蘇州での杭州詩人の活動内容及び、他地域での杭州詩人の評価について考察する予定である。 以上の作業を行うため、清代詩文集、浙派に関する書籍、年譜・伝記資料、地方誌など、購入可能なものについては購入して資料を整える。更にデータベースがあるものについては、中国関係データベースを購入して調査を進め、その結果に応じて国内外の図書館に出向いて文献調査を行う。複写可能な文献に関しては複写するが、マイクロ化その他のして資料を整える。さらに、収集した資料を用い、前年の天津と比較するため、とくに唱和詩について、参加メンバー、詩の内容を研究し、杭州詩会の実態についての詳細を明らかにし、杭州詩人が同時代にどのような存在として認められていたかについても考察する。 またこれらの考察をもとに、乾隆期の後半、杭州詩人集団の活動が急速に衰退していった理由を、各種資料から探る予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
杭世駿を中心とする「南屏詩社」の実態をまず調査し、同時に杭州で詩会を開催した蔵書家たちとの唱和の状況を調査する。杭世駿、趙昱の詩文集の中から、唱和に関する記事を集めると同時に、同時期に杭州にいた詩人たちの作品集の調査を行う。そのために詩文集を中心とする資料を、国内外の図書館で調査する。このために旅費、複写費などを用いる。 また、調査の手助けとするために、詩文集、あるいは地方誌のデータベースを揃え、時代の周辺情況を確認するため、詩人、蔵書家に関する年譜資料をできる限り購入して揃える。 以上の作業を行うため、中国関係データベースCDROMを購入して調査を進め、国内外の図書館において文献調査を行い、必要な文献に関しては複写する。また清代関係図書を購入し、資料収集を行う。 海外や国内各地での調査が多くなるため、持ち運びのできるパソコンを購入し、迅速な作業が行えるようにする。
|
Research Products
(2 results)