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2012 Fiscal Year Research-status Report

情報欠落文における主観性介入に関する日仏英対照言語学的研究

Research Project

Project/Area Number 23520453
Research InstitutionTohoku University

Principal Investigator

阿部 宏  東北大学, 文学研究科, 教授 (10212549)

Keywords主観性 / 望ましさ / 文法化
Research Abstract

同語反復文,矛盾文など言語の最も重要な機能ともいえる情報伝達を放棄したかのような一連の奇妙な文がある.これらは情報価値がゼロ,あるいはゼロに近く,言語活動の常態を逸脱した表現ということにもなろうが,頻度も高く,その意味作用においては各表現を通じてある種の共通性が見られ,通言語的にも興味深い類似性が観察され,これらは情報欠落文に共通な意味生成基盤が存在することを示唆するものである.本研究は,日本語,フランス語,英語の対照研究を通じて,情報欠落文の意味補完メカニスムの解明をめざすもので,平成23年度から開始した.
2年目の本年度は,前年度に引き続き,CD-ROM・DVD-ROMタイプの日本語,フランス語,英語のテキスト・データベース,インターネットの検索エンジンなどを利用して,日本語,フランス語,英語の情報欠落文の用例を広範に収集し,データーベースの構築を行った.また,言語学的文献のみならず,修辞学,西洋古典文献学,国内外の文学研究などの成果の検討も開始した.
情報欠落文全体を対象に分析を行い,主観性仮説の妥当性について検証を行った.さらに,従来モダリティや主観性概念のもとに分析されてきた,動詞の法(特にフランス語の事実性に関わる接続法),法助動詞(特に英語の事実性に関わるshould),発話者の判断に関わる文副詞などの研究成果,およびやはり主観性と強い関連性が窺われる省略文,「男の中の男」のような繰り返し表現,などと情報欠落文との関係をも考察射程に入れた.
統一的な仮説を構築し,この仮説を,一般的な言語理論へと拡張すべく,主観性仮説に基づいた新たな意味論・語用論・多義性理論の構築に向けて,検討を開始した.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

昨年度に引き続き,テキスト・データベース,光学的読み取り装置,インターネットの検索エンジンなどを利用した文字データベースの収集,および口語の自然な発話例を文脈・状況を含めて蓄積し,日本語,フランス語,英語の情報欠落文の用例,特に矛盾文,自明文のデータ・ベースを構築することに成功し,収集例の分析を開始している.
現在までの先行研究の研究史を概観し,主観説仮説の点からの批判的検討の可能性を模索している.
暫定的成果について,その都度,論文を発表している.

Strategy for Future Research Activity

過去2年の成果を踏まえて,文における情報欠落という現象が言語内部においてもちうる普遍的価値を,理論と実証の両面から再検討する.このために,内外の,特に意味論と語用論関連の文献を批判的に検討し,本研究の分析の有効性と特色・独自性を明確化する.
また情報欠落文の分析結果をもとにして,人間の認知構造の特性を分析することを試み,蓄積したデータを,認知科学の枠組みで再整理および再検討する.この目的のために,認知科学関連書籍を参照して,情報欠落文を成立させる認知基盤について考察する.
以上の考察を通して,意味と主観性に関する一般理論の構築を目指す.この情報欠落文研究を端緒として,従来の日本語学,フランス語学,英語学などにおける,意味論・語用論・多義性概念・主観性概念の枠組みを刷新することが,本研究の最終目標である.

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

引き続き,自然言語データ (文字資料,CD-ROM・DVD-ROMタイプのテキストデータベース,インターネット上の文字情報,音声資料,フィールドワーク的資料) の収集,デジタルレコーダによる会話用例の収集,参考とすべき言語学,修辞学等,認知科学関連書籍の参照が不可欠である.対照言語学的な考察には,個別言語の言語データや研究文献が確保されていることが前提となる.また,資料を拡充するために,それぞれの言語のテキストデータベースと関連研究書籍を購入する.
収集した大量のデータを分析するにあたっては,大容量ハードディスクなどを利用することが必要不可欠である.
データ分析や資料整理のための謝金支出が必要である.データ収集や資料調査のために,国内外への出張旅費や,研究成果発表のための学会・研究会などへの出張旅費が必要である.最終年度に複数回のシンポジウムの開催を予定しているが,講演謝金が必要である.
研究成果公開のためのホームページ作成費や,研究成果報告書を刊行する費用が必要である.

  • Research Products

    (5 results)

All 2012 Other

All Journal Article (3 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] L’etude contrastive franco-japonaise sur la “desirabilite”2012

    • Author(s)
      Hiroshi ABE
    • Journal Title

      『文化』(東北大学文学会)

      Volume: 第75巻第3・4号 Pages: 105-124

  • [Journal Article] 川口氏の「スーパー・プレディケート」仮説について2012

    • Author(s)
      阿部宏
    • Journal Title

      『藝文研究』(慶應義塾大学文学部)

      Volume: 第103号 Pages: 243-228

  • [Journal Article] 空間移動表現の意味拡張について 「くる」とvenirの場合2012

    • Author(s)
      阿部宏
    • Journal Title

      『川口順二教授退任記念論集』

      Volume: 第1巻 Pages: 1-13

  • [Presentation] トートロジと矛盾文における意味構築について」

    • Author(s)
      阿部宏
    • Organizer
      トートロジ・ワークショップ
    • Place of Presentation
      東京
  • [Presentation] バンヴェニストのソシュール批判

    • Author(s)
      阿部宏
    • Organizer
      日本フランス語フランス文学会秋季大会ワークショップ
    • Place of Presentation
      神戸

URL: 

Published: 2014-07-24  

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