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2012 Fiscal Year Research-status Report

オノマトペの語末特殊モーラの韻律機能特性に関する実証的研究

Research Project

Project/Area Number 23520455
Research InstitutionUniversity of Tsukuba

Principal Investigator

那須 昭夫  筑波大学, 人文社会系, 准教授 (00294174)

Keywordsオノマトペ / 促音
Research Abstract

平成24年度は,昨年度に実施した予備調査の結果と反省を踏まえ,オノマトペの語末促音の韻律特性の把握に向けた録音実験を実施し,その結果の解析を進めた。
実験の目的は,語末促音の表記されたオノマトペ(例「ガラッ」,促音形)と表記されていないオノマトペ(例「ガラ」,無語尾形)との間で,音声実現上有意な差異があるか否かを検証することである。2音節のオノマトペ語根について,その促音形および無語尾形を分析対象とした。19名の母語話者に各語形を発音してもらい,その音声をPraatで解析した。
解析に際しては促音形と無語尾形でのピッチ動態の異同に着目し,語根第1子音(V1)と第2子音(V2)のF0平均値を語別・話者別に測定し比較するという手法を用いた。その結果次のことが分かった。①促音形/無語尾形の別を問わず,V1よりもV2のほうがF0平均値が高い。つまり「低高」型の音調を以て実現される点で促音形/無語尾形は振る舞いを同じくする。②V2-V1間のF0平均値の差の度合いについても,促音形/無語尾形との間で統計上有意な差は見られない。つまりピッチ上昇の形態に関して促音形/無語尾形は近似している。③ただし,無語尾形に比べて促音形のほうがややF0の分布する帯域が高く,この点については話者により統計上有意な差が認められた。
このうち①②は,促音形と無語尾形との間に「語形の違い」と呼べるほどの有意な差が想定できないことを示唆する。すなわち,オノマトペの語末促音が音調の形成に関しては透明な性格を持っていることを示す点で興味深い結果である。③については事前の予想を越えた結果であり,現在のところ確たる評価は難しいが,語末促音の音象徴機能と何らかのかかわりを持っている可能性も大いに疑われるところであり,今後多角的な検討が必要である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

今年度は語末促音の韻律特性の把握に向けた録音実験の実施とその結果の分析を当初計画とし,それを着実に実施した。分析の結果も当初の予測をおおかた裏づけるものであり,ほぼ期待通りの成果が得られた。
実験に際しては,昨年度実施した予備調査の反省点を踏まえ,綿密な事前準備を行った。予備調査では漫画作品のコマを視覚提示素材として直接使用したが,作品内で表現された非言語的情報による干渉が懸念されることが反省点として残された。このため今回の実験では,予め描画サイズ等を規格化した簡易なイラストを作成し,非言語的情報による干渉を極力抑制する等の工夫を行った。
今年度は録音実験とあわせて知覚実験についても予試験を実施する計画であったが,上記の作業にとりわけ慎重を期したこと,および,録音実験によって当初の予測を越える新たな知見が加わったことなどにより,知覚実験のデザインに関して再度慎重な検討を行う必要が生じた。
ただし,今年度の録音実験を通じて予測を越える知見が見いだされるであろうことはもとより想定していたことである。新たな知見に基づいて実験デザインを再検討することは,研究の精緻化を図るためには不可欠の作業であり,多少の時間をかけても着実な改善を図ることによって,より信頼度の高い結果が得られるものと考えている。
以上の諸点から,上記の評価が妥当と判断した。

Strategy for Future Research Activity

今後の作業課題は大きく分けて二つある。(1)録音実験結果のさらなる解析および,(2)追試験および知覚実験も含めた補完的な実証作業の推進である。
(1)録音実験の解析については,今年度は語根に含まれる二つの母音(V1,V2)でのF0平均値の測定およびV2-V1間での平均値の差に着目した分析を行ったが,これに加え,V2-V1間でのF0傾斜量の測定および,促音形/無語尾形での傾斜量の異同を検証する必要がある。平均値はあくまでもV1, V2のピッチを点に擬した静的な値である。オノマトペ語根でのピッチの遷移様態をダイナミックに捉えるには,変数として母音推定区間の時間長も考慮に入れた解析が求められる。この作業については,測定データの入力を自動化するためのスクリプトの作成をPraat上で行うことで迅速化を図る。
(2)知覚実験については,(A)語末促音の有無と語形弁別との相関を見るものと,(B)ピッチ動態と語末促音認知との相関を見るものの二通りを計画している。(A)については,本年度の実験で録音した資料の中から刺激音声を精選して実施する。(B)については,刺激音声の準備に際してピッチ形状が段階的に異なる合成音声の系列を作成する。有意味なF0屈曲点特定のためのピッチ情報の事前解析が求められるので,この作業にはやや時間を要することが見込まれるが,Praat上の実験ツールの活用を通じて実験自体の自動化を試みることで,作業の迅速化が期待できる。
このほか,音声データのラベリングおよび測定結果の入力等の作業についても,音声分析技術に習熟した複数名の補助者(大学院生など)に協力を求めることで効率化を図る計画である。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

平成25年度は,(1)録音実験によって得られた測定結果の解析および,(2)知覚実験の準備と実施に係る経費が主な使途となる見込みである。
(1)に関しては,作業補助者の雇用に係る経費等,主に人件費・謝金に係る諸経費が見込まれるほか,大量のデータの蓄積および解析に不可欠な大容量記憶媒体(HDDおよびSDメモリーカード等)を準備する計画である。(2)に関しても,刺激音声の録音・合成の作業において補助者の協力が不可欠であるほか,実験準備・実施時の作業補助ならびに被験者に対する謝金等,人件費・謝金に係る諸経費が見込まれる。加えて,実験に際して用いるモニタ等の物品を準備する必要がある。このほか研究成果発表・近接分野での最新の研究情報の収集等,本研究を進める上で欠かせない諸活動に係る旅費等も見込まれる。
なお次年度使用額が生じたが,これは知覚実験を次年度に実施する方針としたため,これに係る経費を次年度に繰り越すことにしたことによる。

  • Research Products

    (1 results)

All 2012

All Journal Article (1 results)

  • [Journal Article] 2010年・2011年における日本語学界の展望 音韻(理論・現代)2012

    • Author(s)
      那須昭夫
    • Journal Title

      日本語の研究

      Volume: 8 (3) Pages: 59-66

URL: 

Published: 2014-07-24  

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