2013 Fiscal Year Annual Research Report
オノマトペの語末特殊モーラの韻律機能特性に関する実証的研究
Project/Area Number |
23520455
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
那須 昭夫 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (00294174)
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Keywords | 促音 / オノマトペ / 特殊モーラ / プロソディ |
Research Abstract |
平成25年度は,前年度得られた実験データの分析を進めつつ,実証的・理論的な観点からオノマトペ語末促音の韻律機能特性について考察した。 語末促音を伴うオノマトペ(促音形,例「ガラッ」)であれ伴わないオノマトペ(無語尾形,例「ガラ」)であれ,その発話においては語頭から語末にかけてピッチの上昇が起こりがちであるが,今年度の分析では,このピッチ上昇の動的様態(F0傾斜量)が促音形と無語尾形とでどのような異同を見せるか検討した。その結果,両形のF0傾斜量には統計的有意差がないことを捉えた。 促音形と無語尾形とを外形上区別する唯一の手がかりは,語末に促音の表記があるか否かの一点に尽きるが,F0傾斜量に示差性が認められなかったことは,促音表記の有無が必ずしも語形の対立につながる要素として働いているとは言えないことを示唆している。すなわち,両形は表記上の外形は異なっていても,語形としては実質的に等価な関係にある。 この知見は,オノマトペに対する母語話者の暗黙の把握を反映している。各種オノマトペ辞典の中には,見出し語形において「がた(っ)」のように語末促音を括弧に入れて示す方針を採っているものがあるが,この扱いは,促音形と無語尾形の関係を相互交代可能なものとして捉えているものにほかならない。本研究ではこうした従来暗黙の直観を定量データに基づいて裏付けた。 以上の成果を通じて,本研究では促音語尾の「無標性」とも言うべき性格を見いだした。促音が語末に加わると,必然的に,アクセント核を含むフットが語末に形成されることになるが,こうした構造は語尾付加型オノマトペ全般に観察されるものである。この点から語末促音には無標要素としての性格が見いだされる。すなわち語末促音は,オノマトペにとって無標な韻律構造を作り出す調整要素として機能していると考えられる。
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Research Products
(2 results)