2011 Fiscal Year Research-status Report
生成文法の極小主義における派生入力の性質と連鎖的依存関係に関する研究
Project/Area Number |
23520458
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
R・A Martin 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 准教授 (30302342)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 理論言語学 / 生成文法の極小理論 / 連鎖 / コントロール構文 / 国際研究者交流 / 米国:スペイン:カナダ |
Research Abstract |
マーティン代表は研究プロジェクトの初年度にあたって積極的に国内外の国際学会・講演に参加し意見交換・資料収集に務め研究課題を大幅に進展させた。特に2011年10月にドイツ・ポツダムで行われた国際ワークショップにて研究の基礎を成す連鎖について発表し海外研究協力者であるメリーランド大学教授・Juan Uriagereka氏と本プロジェクトで進めている共同研究の一部を発表した。 又、メリーランド大学を訪問して、Uriakereka氏と研究打ち合わせを行い共同研究の内容を詳細に精査した上で議論を交わし共同研究を精力的に推し進め、科研プロジェクトを深化させた。又、同じ時期に同大学にて行われた言語理論分野の第一人者であるNoam Chomsky氏の講演に参加した。その講演は本研究プロジェクトにも非常に示唆が深いものであり、講演後の意見交換を通して、更なる専門的な知見を重ね、本研究プロジェクトの方向性を確認した。Uriagereka氏とともにChomsky氏と面談を行い、二人が進める共同研究について真摯に議論をし貴重な知見を得ることができた。又、メリーランド大学にある貴重な文献などから研究プロジェクトを進めるのに必要な資料を収集した。 加えて、世界の第一線で活躍しているバルセロナ自治大学のGallego氏とケベック大学のDi Sciullo氏を招待し3月に開催された「第9回言語進化の国際会議」(EVOLANG 9) にて本研究プロジェクトと密接に関係する国際ワークショップを主催し多大な成功を収めプロジェクト研究を大幅に前進させた。結果、次年度に向けて確固たる研究基盤を築けた。 藤井(連携研究者)は精力的に日本語のコントロール構文の分析を進め一致現象と時制の関係に着目し日本語に類するコントロール構文の形成について一定の示唆を与えた。又、国内にて発表を行い論文を掲載し研究成果を公開している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は本研究プロジェクトの初年度にあたり、ドイツ・ポツダムの「ミニマリスト・プログラム ワークショップ」にて、前研究プロジェクトの研究成果に基づいた分析をコントロール構文に加えて寄生空所に汎用し、本研究プロジェクトの方向性が正しいことを示した。又、分析上、区別が難しいとされるbelieveのような例外的格付与構文とtryを代表とするコントロール構文を、本分析を用いて明確に類別し、本研究プロジェクトが広範に適用できることを示した。又、本研究プロジェクトの核を成すUriagereka教授 (メリーランド大学/海外研究協力者) との共同研究もマーティンの海外出張により、多岐にわたり大幅な進展を見せ、多大な成果を上げている。特に、言語理論分野のChomsky教授 (マサチューセッツ工科大学) と本プロジェクトについて議論したことで、生物言語学や言語理論分野全般から最新の多面的な知見が得られ、連鎖に類した依存関係の位置づけを双方で確認することができ、非常に有意義なものであった。最後に、3月に開催された「第9回言語進化の国際会議」 (EVOLANG 9) にて、本研究プロジェクトと密接に関係する国際ワークショップ (理論言語学・生物言語学ワークショップ) を開催したが、本科研プロジェクトの資金で最先端の研究を行っているGallego氏とDi Sciullo氏の二氏を招聘し、それ以外にも三重大学の杉崎氏、海外からもBoeckx氏、Bouchard氏が参加し、多彩な角度から連鎖・統語上の依存関係を含む題目を扱うことができ、これらの本質を精査することができた。それぞれの講演後の質疑応答を含め、本研究プロジェクトが目的とする連鎖形成と解釈の研究基盤に大いに還元できるものであり、本研究プロジェクトの発展に大いに寄与した。以上から、本年度は計画以上の進展があったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究プロジェクトの個々の研究細目に力を入れて研究題目も幅広く扱い初年度に得た知見を上乗せして研究を更に深化させる。マーティンは引き続きメリーランド大学のUriagereka教授、バルセロナ大学のBoeckx教授、バルセロナ自治大学のGallego准教授と連携を密にして共同研究を推し進める。特に、連鎖の本質と解釈について、理解を深め、研究目的にある個々の題目に取り組む。又、初年度に得られた研究成果をwh移動など非項移動を中心に全域適用移動や連続循環移動など一定領域を超えて連鎖が形成される言語事象を研究し分析の妥当性を検証する。最終的には広範囲にわたる様々な言語から連鎖と類似した依存関係が見られる諸事象のデータを集めた上で本研究プロジェクトの成果である連鎖・及び連鎖解釈のメカニズムの研究を発展させて分析する。その上で、本研究プロジェクトで広範に昇華させた研究成果と連鎖に類似した依存関係を扱っている様々な他分析と比較する。 藤井(連携研究者)はコントロール構文とともに日本語・中国語・英語の付加詞のwh移動を調査して、比較統語研究を行う。この研究はマーティンが行っている共同研究と相互に作用しあい、wh移動や連続循環移動が形成する連鎖について重大な示唆をもたらすことが期待される。 初年度に引き続き、国際ワークショップを行い海外から第一線で活躍する研究者を招聘し国内からも関連する研究を行っている研究者の発表も組み入れる。又、国内外の学会において、本プロジェクトで得られた発見を積極的に公表し、本プロジェクトの成果を含めて積極的に議論を交わして、知見を蓄積させ、プロジェクトの研究の内容を更に深化させる。ウェブページなどでこれらの成果を論文として掲載する。このように公表することによって、様々な研究者から多大な意見が得られ、更なる研究の進展が期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年3月に「第9回言語進化の国際会議」 (EVOLANG 9) にて国際ワークショップを開催したが、招聘する予定であったMITのBerwick教授が諸事情で来日が不可能になり、その関係で本科研プロジェクト資金にて招聘する講演者が3名から2名に減った。結果として、27万円が剰余金となり、次年度に使用することになっている。この剰余金により、次年度に開催予定である国際ワークショップの招待講演者を海外から更に1名招待することが可能になった。よって、今年度の剰余金である27万円は使用用途として変更はなく使用される予定である。 上述のように、最先端の研究内容を吸収して、更に本研究プロジェクトの内容を大幅に深化させるために、海外から第一線で活躍する研究者1名と国内で高度の専門的知見を有した研究者数名を招待し、国際ワークショップを開催する予定である。以上の講演者に専門的知識の提供の代価として謝金を用いる。 他にも旅費の使い道として以下の二つを計画している。まず、海外共同研究者であるメリーランド大学のUriagereka氏との共同研究を進めるために、メリーランド大学を訪問して数日に渡って打ち合わせを行う予定である。そして、本研究プロジェクトの成果を幅広く公表し、多岐にわたる研究者の専門的知見を得るために、国内外で発表する予定である。 又、最新の研究知見を得るために、新刊・近刊を中心に理論言語学の蔵書を購入するために物品費を用いる。その他にも、国際ワークショップを開催するので、印刷代及び諸費用を「その他」の財源から当てる計画である。
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Research Products
(3 results)