2012 Fiscal Year Research-status Report
機能範疇によって導入される項の主語性と意味に関する研究
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23520459
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
松岡 幹就 山梨大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (80345701)
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Keywords | 統語論 / 機能範疇 / 主語 / 叙述 |
Research Abstract |
交付申請書の研究実施計画(平成24年度)に記した内容のうち、主に以下の点について、研究を進展させた。 英語の位置変化構文において、本来主語指向の副詞が目的語指向に解釈されるという現象について、分析の一部を修正した。問題の構文には、目的語と同一指示の項を指定部として導入する機能範疇が内在し、その項が構造の中で与えられる意味が主語指向性副詞の意味と合致することによって、問題の解釈が可能になるという仮説を立てていた。しかし、そのような解釈を可能にする根本的な要因は、項が持つ意味ではなく、機能範疇を介して項と副詞の間に結ばれる構造的叙述の関係であるという分析に至った。 対応する日本語の位置変化構文においては、主語指向性副詞が目的語指向に解釈されることはないという観察について、日本語では対応する機能範疇が項を導入する能力が制限されているためであるという仮説を立てていた。この可能性を検証するため、同種の機能範疇を内在すると考えられる、認識他動詞が非定形形容詞を伴う構文について、日本語と英語の比較を行った。その結果、英語においては、問題の機能範疇が指定部に項を導入することを示唆する事実がある一方、日本語にはそのような現象が見られなかった(下記、「研究発表」参照)。しかし、両言語の間にこのような違いが見られる要因として、機能範疇の性質の違い以外に、目的語名詞に対格を付与する仕組みが異なるという可能性があることがわかった。この点について、今後改めて検証する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析の対象としている英語の現象について、当初の仮説とは異なる分析に至ったが、それをまとめた論文が審査を通過し、近く刊行されることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
日本語の構文の性質について、当初立てていた仮説以外の可能性も視野に入れて可能な限り明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度残った端の金額と次年度に請求する研究費を合わせ、論文執筆に必要な図書などを購入する他、これまでの研究で得られた結果を海外の学会で発表するための旅費に充てる。
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