2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520460
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
町田 健 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (60190378)
|
Keywords | 時制 / アスペクト / 動作態 / 文の意味 / 時間的特性 / 事態の構造 / 複合性原理 / 形式化 |
Research Abstract |
世界の諸言語において事態が成立する時区間および事態の全体性(全体または部分)を表示する形態的手段と、文を構成する述語部分が表示する事態の特性が複合され、文が全体として表示する時間的特性を形式的に導出する理論的枠組みを考案した。この枠組みの提示により、動詞分類(動作態)と時制・アスペクト形式の統合がいかにしてなされるのかを、通言語的に記述し説明することが可能となった。 かかる時間的特性導出理論の妥当性は、日本語、英語、フランス語等にこれを適用することにより検証してきているが、できるだけ多くの言語についても検証する必要がある。このために、詳細な記述が未だ進んでいないと同時に、話者数も減少しつつあるアメリカ先住民諸語に関する資料を収集するとともに、現地に赴いてその使用実態を調査した。それ以外の言語に関しては、専門家により公刊された研究の成果を収集し分析した。分析結果は整理されて、理論の検証に供される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時制・アスペクトに関する一般言語学および形式意味論の観点からの研究は順調に進展し、当初の目的をほぼ達成している。こうして理論的側面で形式化された事態の時間的構造が、世界の諸言語においていかなる形で反映されているのかを検証し、理論の妥当性を証明することについては、日本語、中国語、英語、フランス語、ラテン語等の主要言語を対象とする部分では進展した。また、それ以外の言語についても、記述の成果が公刊されているものでは、資料の整理は行っている。ただし、世界の言語に関して、時制・アスペクト形式の全体的分布を提示するまでには至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
理論面では、述語を構成する形態素としての時制・アスペクト形式と、述語そのもののが表示する時間的特性としての動作態をできるだけ厳密に形式的に表示し、これらが統合され、事態の時間的特性が導出される過程の分析はほぼ達成している。しかし、事態の時間的特性は、文の構成要素としての名詞や副詞の性質、さらには発話の状況も考慮に入れなければ最終的には決定されない。これらの要素をも含めた全体的な時間的特性の導出過程を、今後は詳細に分析していく予定である。 分析結果の妥当性の検証は、できるだけ多くの言語を対象としてなされる必要があるので、今年度も引き続き、日本語や英語、中国語などととは類型的に異なった特徴をもつ諸言語を対象として、資料の収集と分析を実行する。 また、時制・アスペクト形式がモダリティー的機能を併せ持っていることは、世界の多くの言語において観察される現象である。今後さらに研究を発展させるための基礎として、時制・アスペクト形式の機能とモダリティー表示との関連も考察していく予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
時制・アスペクト、モダリティー、文の意味表示、類型論に関する文献資料の購入、海外(アメリカ合衆国)におけるアメリカ先住民諸語の記述資料の収集と実地調査、国内の専門家からの知見の収集、研究成果の発表と公刊を中心的な目的として、研究費を使用する。
|
Research Products
(1 results)