2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520464
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
町田 章 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (40435285)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
|
Keywords | 日本語学 / 言語学 / 英語学 / 主体化 / 客体化 / ラレル / 受身 |
Research Abstract |
本年度は、日本語のラレル形式(自発、尊敬、受身、可能)に見られる共通の事態把握メカニズムである事態内視点をどのように図式化するかという課題に取り組み、国際認知言語学会において研究発表を行った(‘(In)visible Interactive Conceptualizer: A Cognitive Account of Japanese rare-Construction,’11th International Cognitive Linguistics Conference, Xi’an, China)また、この課題に関しては「日本語ラレル構文の形式と意味 -認知文法からのアプローチ-」(大庭幸男・岡田禎之(編著)『意味と形式のはざま』, 英宝社)として、刊行された。 また、言語化されない認知主体をどのように図式化するかという課題にも取り組み、2つの研究発表を行った(「主観性と見えない参与者の可視化-客体化の認知プロセス-」第12回日本認知言語学会,奈良教育大学,「傍観者と行為者-認知主体の二つのあり方-」言語と(間)主観性研究フォーラムin仙台:ラネカーの視点構図と(間)主観性,東北大学)。 また、日本語受身文に関する課題にも取り組み2つの研究発表を行った(「日本語受身文の分化と客体化-経験主発生の認知メカニズム-」日本英文学会北海道支部第56回大会,札幌学院大学,「用法基盤と意味の創発-間接受身の被害性-」第一回認知文法研究会,同志社大学)。 最後に、図式を用いた研究の可能性という大きな課題に関する研究発表も行った(「日本語認知文法の課題-認知主体をどう扱うか-」認知言語学セミナー2011,札幌大学、「認知図式の可能性-日本語の分析を通して-」京都言語学コロキアム(KLC),京都大学)。 以上、本年度は、4つの課題に並行して取り組み、成果を挙げることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、予定を大幅に上回る研究発表を行うことができた(国際学会1回、全国学会1回、地方学会1回、フォーラム1回、研究会3回)。 内容的にも、Langacker(1998)以降の主体化、およびLangacker(2008)のObjective Content (OC)の問題点がより明確にされ、それに代わる主観的状況(Subjective Scene:SS)のモデルを提案することができた。 また、図式による研究の可能性に関しても扱うことができたとこは、大きな進展である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、前年の成果を踏まえ事態内視点の客体化に関する研究を行う。事態内視点および主観的状況を用いた分析は常に、参照点構造による客体化とセットで考える必要があるからである。 この客体化とは、Langacker(1990:340)が想定している主体化(段階的に、事態内のtrと事態の外にある参照点が同一指示される場合→事態内のtrと事態の外にある参照点が同一指示されない場合→事態外の参照点とグラウンドGが同一指示される場合へと進むプロセス)とは反対に働く認知プロセスのことである。 このような客体化のプロセスを想定すると、なぜ間接受身で項が増加するのか、なぜ二重主語構文のいわゆる総主のtrは「ハ」で表示される傾向が強いのか、さらに、対象のガ格を要求する感情形容詞文では、他者の感情を表すことができないのか、など様々な言語現象が説明できるようになると期待される。 今後は、この客体化のプロセスに焦点を当て、日本語の図式による分析を進めると同時に、引き続き、主観的状況(SSモデル)を用いた英語の図式化を進める予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、科研費の執行が全額認められるかどうか不確定の期間が長かったため、書籍の購入などの執行を先送りした部分があった。次年度は、この分を調査研究のためにあてる予定である。
|
Research Products
(9 results)