2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520480
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
橋本 功 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (10022378)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木橋 宏勇 杏林大学, 外国語学部, 准教授 (40453526)
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Keywords | ヘブライ語メタファ / 翻訳 / 英訳聖書 / メタファの通時的解釈 / メタファ理論 / 異文化とメタファの変容 |
Research Abstract |
研究代表者である橋本功は、前年度に引き続き、ヘブライ語聖書のメタファ、ラテン語訳聖書のメタファ、および、英訳聖書のメタファの採集を継続した。採集されたメタファ表現の変容の仕方を中心に整理・分析し、大きく以下の4つの観点から分類を試みた。 (1)ヘブライ語でメタファとして使用されていた表現が、翻訳により、英語文化に根付いたメタファ表現に変換された。(例)ヘブライ語:daughter of eye → 英訳:apple of eye「申命記」32:10。(2)ヘブライ語のメタファ表現が直訳された結果、ヘブライ語と英語で意味解釈の仕方が異なるために、英訳後に、メタファ解釈が不可能になった。(例)ヘブライ語:mother-of the-road → 英訳:the parting of the way 「エゼキエル」21:21。(3)ヘブライ語でメタファではなかった表現が英語に直訳された後、英語固有のメタファ解釈が行われ後、時代の変化と共に、メタファの抽象度が高くなっていった。(例)ヘブライ語:gird one's loin → gird up the loins 「列王伝下」4:29。(4)ヘブライ語の文化に根ざしたメタファが英語に直訳された結果、文化の違いにより、原典の意味が不明になったり、意味を中心とした意訳によって原典のメタファが消失。(例)ヘブライ語:cover foot → 英訳1(直訳):cover his feet; 英訳2(意訳)be relieving himself 「士師記」3:24。これらの成果の一部は英語史研究会、大阪大谷大学英文学会で公表した。 研究分担者である八木橋宏勇は、先行研究を精査しながら、研究代表者が採集したメタファ表現を理論的観点から分析し、メタファ構造の構成と構成要素を精査することによって、メタファ理論との整合性について考察した。その成果の一部は日本ことわざ学会で公表するとともに、翻訳著書の注釈を通じて公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘブライ語聖書からのメタファ表現の収集に相当の時間を要したが、必要な資料の収集は順調であった。これらの資料について、主に、次のことを行った:(1)ヘブライ語聖書、ラテン語訳聖書、間接英訳聖書、直接英訳聖書からメタファを系統的に採取した。 (2) 翻訳によって引き起こされたメタファの受容と変容の実態の調査と受容された原因と変容した原因について考察した。(3)ヘブライ語のメタファ表現が英訳によって引き起こされた受容と変容の型について分析した。(4)異なる時代と異なる文化の下で翻訳された結果生まれた聖書のメタファの構造を、現行のメタファ理論および言語人類学の研究成果によって矛盾なく説明することが可能か否かの検証をした。(5)イギリスの複数の大学および研究機関で関連研究資料および書籍の収集を行い、ケンブリッジ大学のヘブライ語学者と考察結果について意見交換をした。(6)複数の学会で研究成果を公表すると共に、関連著書を翻訳し、その注釈に研究成果を盛り込むことによって、研究成果を公表した。 以上により、達成度を「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究推進予定は以下である。 (1)ヘブライ語聖書、ラテン語訳聖書、間接英訳聖書、直接英訳聖書ごとに資料の最終整理と分析を行い、それぞれのメタファ表現のタイプを判定し、変容の型を明確にする。これと平行して、これらのメタファ表現の構造分析と意味分析を行い、現行のメタファ理論との整合性を検証する。 (2)現在の資料の分析結果と理論上の検証結果を国の内外の関係研究者に提示し、それぞれの整合性について意見交換をする。 (3)国の内外にある関連機関においてなされた先行研究と、最新の関連研究資料の精査を行い、本研究課題に関する最新の研究成果を本研究課題に役立たせる。 (4)研究代表者と研究分担者が直接議論をしながら、資料の分析結果とメタファ理論の整合性について総合的な検証と総括を行い、関連学会で研究成果を公表する。 (5)研究成果の総括を行い、全成果の公表に向けた準備をする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究分担者が研究分担の責務を果たしたものの、所属校の校務の関係で外国の関係大学で資料収集を行い、関係する研究者と研究課題について意見交換を2回にわたり実施するという計画を実施することができなかった。このとが主原因となり、当該年度の実支出額が当初計画よりも少なくなった。 海外出張:研究代表者は、Cambridge大学St. Edmund校および同大学の中央図書館等、聖書研究が盛んな複数の英国の大学および研究機関で最新の資料の収集を行うとともに、Cambridge大学名誉教授Robert Gordon博士を含む、聖書関係の研究者から聖書ヘブライ語のメタファおよびその翻訳についての知見を得、かつ、本研究課題の成果について意見交換をする。一方、研究分担者は、Oxford大学Lady Margaret Hallと同大学のBodleian LibraryおよびLondon大学のUniversiy Collegeに出張し、メタファ理論に関わる最新の資料収集を行うのと平行して、メタファ理論関連の研究者と通時的メタファ理論の研究について意見交換をする。 機器の購入:最終年度で資料と考察結果を集約するために、コピー機とノートパソコン(一式)等を購入。
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Research Products
(3 results)