2012 Fiscal Year Research-status Report
自発音声データの定量的解析による日本語韻律構造理論の再構築
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23520483
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
前川 喜久雄 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語資源研究系, 教授 (20173693)
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
『日本語話し言葉コーパス』のコアに記録された約3500個のフィラーをデータとして、フィラーの生起している音声環境からフィラーの高さを予測する研究を行った。分析の結果、フィラーの高さは、直前のアクセント句末尾のトーンの高さ、直後のアクセント句冒頭のトーンの高さ、フィラーの生起タイミングの三種の情報が与えられていれば、補完法によって、平均二乗誤差20Hz程度の精度で予想できることが判明した。この誤差はフィラー自体のピッチレンジや通常のアクセント句のピッチレンジよりも顕著に小さい値であり、かなり正確な予測であると評価できる。また言語学的な観点から考案された5種類の予測モデルを比較した結果、フィラー前後のトーンを直線補完するモデルの平均誤差が最も小さいことが判明した。この結果は、日本語の韻律構造を考える際に、フィラーの高さについては言語学的な指定が不要であることを強く示唆するものである。ただし一部のフィラーについては、部分的に高さの指定が必要とされる可能性が排除しきれておらず、今度の検討課題となっている。以上の成果は日本音声学会で発表したほか、国際学会にも投稿中である。以上に加えて、上記予測モデルの知覚的な妥当性を検証するための合成音声を用いた知覚実験にも着手して、予備的な分析を終えた。結果は、予測モデルの妥当性を示すものであるが、現時点ではデータ数が少なすぎるために、参考程度の価値にとどまっており、成果発表にはいたっていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書には、final lowerling, filled pause, declinationの3現象を分析するとしたが、初年度にfinal lowering、二年度にfilled pauseについての分析を実施して、それぞれ国際学会で発表するレベルの成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度には、filled pauseについての分析を継続し、査読論文として投稿することを目指すとともに、当初から予定しているdeclinationの分析に着手する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
スウェーデンで開催される非流暢性現象に関する国際会議(DiSS2013)、フランスで開催される音声科学全般の国際会議(INTERSPEECH2013)で研究成果を口頭発表するために海外旅費を使用する。日本音声学会あるいは日本音響学会で口頭発表を行うために国内旅費を使用する。知覚実験用にノートパソコンとヘッドホンを購入する。掲載費を要する雑誌に投稿した場合は、掲載費を支払う。
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Research Products
(1 results)