2011 Fiscal Year Research-status Report
ユカタン・マヤ語復興活動における言語学的知見の実践と応用
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23520485
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 栄人 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (10240285)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 言語復興 / ユカタン・マヤ語 / 逆受動態 |
Research Abstract |
本年度は現在メキシコでユカタン・マヤ語の教育に用いられている既存の教科書ならびに文法書における文法的記述を検証することを主たる目的とした。多くの文法解説はスペイン語の文法概念に基づいたものであるため、近年言語学的研究によって明らかにされた逆受動態に関する説明がほとんどなく、結果として自動詞と他動詞の説明において多くの矛盾が生じている。また、ユカタン・マヤ語の動詞は時制ではなくアスペクトを基準としたものであるため、時制の扱いにおいても様々な問題を抱えている。 本年度はさらに、上述の問題点を解決するために、『スペイン語話者のためのユカタン・マヤ語文法解説』(Guia gramatical del maya yucateco para los hispanohablantes)を作成した。この文法解説における内容の可否については、マヤ語話者である、ユカタン州立オリエンテ大学所属のMiguel Oscar Chan氏ならびにキンタナ・ロー州立キンタナ・ロー大学講師のHilario Chi Canul氏と共に、現地において検討を行った。その検討を元に現在改稿版の作成中である。 また一方で、ユカタン州立大学付属野口英世地域文化研究所社会科学部門が開講している中上級クラスのマヤ語講座、オリエンテ大学がユカタン州教育省先住民局と共にマヤ語教師向けに開講しているマヤ語専修コース、さらにはメリダ市マヤ語アカデミーにおいて実施されているマヤ語専修コースなどの授業に実際に参加し、教育現場における文法解説が抱える問題点を受講者の立場から探った。さらに、各講座の受講者に対してマヤ語を勉強する上で、また教育する上でどのような問題点を抱えているかについて面接調査とアンケート調査を実施した。なお、このアンケート調査の分析はまだ済んでいない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
文法的記述の検証だけに留まらず、そこから見えてくる既存の文法書が抱える問題点の大枠については比較的容易に特定ができた。また、それらの問題点を解消するための新たな文法解説の執筆も想定以上に早く済ますことができた。その結果として当初二年目に予定していた『スペイン語話者のためのユカタン・マヤ語文法解説』の叩き台の作成が終わった。 また、ユカタン州においてユカタン・マヤ語教育の改善に向けた教師の育成プログラムが予想以上の規模とスピードで進められていることもあり、その実践の中から多くを学ぶことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)マヤ語専修コース等の受講者に対して行ったアンケート調査から、マヤ語学習ならびにメキシコにおける現在のマヤ語教育が抱える問題点を再検討する。(2)現在再検討中の『スペイン語話者のためのユカタン・マヤ語文法解説』の内容をより充実したものにする。(3)また、それを早急に印刷・配布し、問題点の洗い直しを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
『スペイン語話者のためのユカタン・マヤ語文法解説』の見直しに当たってはマヤ語文法に通じたマヤ語話者による協力が必要であるため、該当する専門家を日本に一人招聘するための旅費および謝金として400,000円を予定している。 マヤ語等に関する関連図書(50,000円)も必要である。 また、メキシコ・ユカタン州の教育機関における現地調査を継続する必要があるため、その旅費(700,000円)および現地交通費(50,000円)を使用する。 マヤ語文法解説書の印刷ならびにその送料として、200,000円を予定している。
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Research Products
(1 results)