2012 Fiscal Year Research-status Report
ユカタン・マヤ語復興活動における言語学的知見の実践と応用
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23520485
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 栄人 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (10240285)
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Keywords | メキシコ / ユカタン / マヤ語 |
Research Abstract |
平成23年度にスペイン語で作成した「マヤ語文法解説書」を、マヤ語教育に関わるネイティブ教師の協力を得て内容の改善を図った。今年度、協力を得たのはキンタナ・ロー州立大学のHilario Chi Canul教員とユカタン州立東部大学のMiguel Oscar Chan教員である。この内、Hilario Chi Canul氏は日本に招聘し、一緒に解説書の内容に関する検討を行うとともに、実際にマヤ語の集中講義を東北大学の学生に対して実施することで、その実用性について確認した。 また、同文法解説書の内容の一部を、10月にメキシコ市のメキシコ大学院大学で開かれた第1回ユカタン・マヤ語学国際会議においてパネル展示で公開した。出席者の中でも、マヤ語の言語学的研究や教育に携わる、若手のメキシコ人研究者・教師にその成果を知ってもらうことができたことは、研究成果の普及という点で重要な機会となった。本研究は学術的な言語学的研究とマヤ語教育との橋渡しをすることをも研究の目的の一つとしているが、マヤ語教育という実践的な目線からのマヤ語文法の例を学術レベルでの研究を行っている外国人の研究者に提示できたことは、彼らの研究そのものに教育的効果という実践的なパースペクティブを、何らかの形で導入する機会になったはずである。 一方、研究成果の公開・普及の一環として、12月にヘルシンキで開催されたヨーロッパ・マヤ学会議にも出席したが、この会議では、マヤ語教育の現場からは理解することのできない、マヤ語使用に関する歴史的背景を学ぶことができた。ここで得た知識・情報はマヤ語の文法規則を相対化する上で大いに役立った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進展はおおむね順調であるが、文法解説書の見直しに際して共同研究者の都合により、教育に携わる多くの人たちに現物を見てもらうことができなかった。その意味で、文法解説書そのものは完成に近づいたが、実践レベルからの再検討と実践への応用という観点では多少達成度が低いと言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の課題はマヤ語教育に最大限資する文法解説書を完成させ、それをマヤ語教育の現場に導入することである。 文法解説書の作成に関しては、さらなる検討を加え、可能な限り早い時期に印刷し、現地の教育機関等に配布する。また、現在スペイン語で作成している文法解説書はHilario Chi Canul(キンタナ・ロー大学)の協力を得て、マヤ語に翻訳する作業も試みる。 マヤ語教育の現場への導入に関しては、マヤ語教育に携わっているキンタナ・ロー州立マヤ・インターカルチュラル大学のAngel Ucan Dzul教員を日本に招聘し、マヤ語教育における文法の効率的使用について検討する。また、3月に実施される世界母語デーにあわせて現地入りし、完成したマヤ語文法解説書の宣伝を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は協力者の事情により、予定していた文法解説書の印刷ができなかったため、ユカタンへの出張を行わなかった。その結果、研究費は432,670円の残が生じた。この残った研究費は、当初予定していなかったAngel Ucan Dzulの日本招聘に当てる。 次年度の主たる研究費は、文法解説書の印刷費およびその配布費用(250,000円)である。配布に当たっては、単に送付するだけでなく、直接現地の教育実務者に会ってその利用を呼びかけたり、宣伝したりすることも必要である。そのための現地渡航費用として(650,000円)を計上している。謝金その他として100,000円を計上しているが、Angel Ucan Dzul氏の招聘に必要な経費で不足する分はここから補う予定である。
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Research Products
(1 results)