2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520487
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
嶋崎 啓 東北大学, 文学研究科, 教授 (60400206)
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Keywords | ゲルマン語 / 文法化 |
Research Abstract |
同じゲルマン語の中でもドイツ語と英語とアイスランド語では文法範疇の歴史的発達に違いが見られる。例えば、完了形の発達については、ドイツ語が最も高く、アイスランド語がそれに続き、英語は最も低い。その理由として考えられるのは、英語においてはbe+過去分詞が受動態として定着したということである。その結果、haveがbeの他動詞形であるため、have+過去分詞も間接受動しての機能を他のゲルマン語よりも多く負わされることになり、完了形としての発達が阻害されたと考えられる。それではなぜ受動態を表す形式がドイツ語ではsein+過去分詞ではなく、werden+過去分詞になったのに対し、英語でそれがbe+過去分詞になったのかといえば、英語では動詞が全般に完了相に傾いているためだと考えられる。すなわち、英語のbeとドイツ語のseinは同義と見なされるが、アスペクトという点ではbeの方が完了相的意味を強く持つため、静的状態のみならず動的変化の受動をも表すことが可能になった。そして英語の動詞は完了相に傾いているために進行形も発達した。それに対し、もともと動詞が非完了相に傾いているドイツ語においては進行形が不要であった。完了形の発達は最終的に過去時制化向かうが、動詞が完了相であるかぎり、完了形は事態の変化後の状態を表すため、純粋な過去時制にはならないので、その点でも英語は完了形が発達しにくい状況にあったと言える。このように、完了形の発達を左右するのは動詞のアスペクトであると考えられる。
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Research Products
(1 results)