2013 Fiscal Year Research-status Report
日本語の格システムの類型的変化と統語コーパス構築に向けての基礎研究
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23520491
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
柳田 優子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (20243818)
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Keywords | 特定性 / 定性 / 示差的項表示 |
Research Abstract |
本年度は生成文法理論に基づき、「示差的項表示(differential argument marking)」類型の理論化と日本語の史的変化に関する基礎研究を行った。上代日本語の項表示に類型的に「示差的項表示」に特徴的な、意味的、統語的特質があるというYanagida and Whitman (2009)の仮説の検証を行った。本研究では、示差的項表示(DAM)をもつ言語(ヒンズー語やトルコ語など)の詳細な資料調査を行い、DAMの形態的、統語的特徴を比較検討した。また、オックスフォード大学Bjarke Frellesvig氏との共同研究で、Oxford Corpus of Old Japaneseの統語コーパス作成のための『続日本紀宣命』の統語情報、文構造、格助詞の文法タグづけを行った。筑波大学にて、平安時代物語文「土佐日記」「源氏物語」の主語表示と目的語表示の調査をおこない、大規模データによる検証を行った。 上代、中古日本語は、動詞の項である主語や目的語が格表示される場合と無表示の場合の2つのタイプがある。伝統的な国語学の研究では無表示の項は単に格助詞が脱落した文体的なものであると考えられてきたが、大規模データから、格表示される項には「定性(definiteness)や特定性(specificity)などの意味が付加されると結論づけ、2013年8月にオスロで行われた国際歴史言語学会(ICHL 21)、2014年4月にはドイツで行われた国際ワークショップで研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大学業務が多忙のため、科研の研究のための時間が取りにくく、資料調査が遅れている。平成26年度には、以下「12. 今後の研究の推進方策」のとおり、作業をすすめ、本研究課題の目的を達成したい。
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Strategy for Future Research Activity |
平安時代資料の目的語表示の調査を行い、「ヲ」格表示される目的語に特定性の意味が付加されるかどうかを検証する。また、特定性の意味の喪失がいつ頃起こったかを目的語を中心に歴史資料を調査し、実証研究する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題に関する研究成果を発表するための国際学会、またワークショップが、次年度に開催されることになったため、次年度使用額が生じた。 国際学会発表2件のための渡航費と滞在費用に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)