2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520494
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
石井 正人 千葉大学, 文学部, 教授 (50176145)
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Keywords | 歴史言語学 / 比較言語学 / 西洋古典学 / ラテン語学 / ドイツ語学 / 言語学 / 日本文化の翻訳発信 |
Research Abstract |
本研究は、印欧語における非人称受動表現を、特にそれが発達しているドイツ語とラテ音を中心に、適宜サンスクリット語と古代ギリシャ語を参照しつつ比較考察し、その本質的構造と展開諸形態を明らかにすることを目的とする。 研究第2年度である平成24年度では:1)ドイツ語史における非人称受動表現の分析を更に発展させ、従来の文法研究・記述では周縁的現象として軽く扱われるのみであったこの非人称受動表現が、実は伝統的な文法記述の革新を迫るものであり、現代における日独言語文化交流にも重大な影響を及ぼすものであることをが明らかにした。この一部は論文「Man isst, was auf den Tisch kommt!」(日本語)として発表したが、更に別の大がかりな研究プロジェクトへの発展の構想が具体化し、緊急の今日的意義を持ちながら、目下言語学研究からは手つかずのまま膨大な量にのぼる、日本のポップカルチャーのヨーロッパへの翻訳紹介を緻密に分析するという、基礎的な調査を開始した。2)サンスクリット語文法における非人称受動表現の重要性を確認するために、サンスクリット語文法そのものの全体的な見直しをはかし、試験的に新たな文法記述を試みた。3)同様に新たな視点からドイツ語史の記述も試みた。4)本研究が日本における歴史言語学研究の発展に担う意義を自覚し、初年度で既に本科研費を利用して日本歴史学会の創立に参画し、優秀な内外の研究者と研究交流を行ったが、平成24年度には更にこの研究活動を発展させ、日本歴史学会第2回大会を、本科研プロジェクトと同学会の共催で研究代表者の本務校である千葉大学で開催し、成功させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)ドイツ語における人称受動表現について論文を発表し、かつその中で更に次の研究プロジェクトへの発展の可能性を確認し得た。 2)サンスクリット文法とドイツ語史について新たな概略的記述を得て、次年度で公表する予定である。 3)研究交流を進め、第2回歴史言語学会をこの科研プロジェクトと同学会の共催で本務校の千葉大学で開催し、成功させた。 4)更なる現代的課題で日本文化の海外発信に係わる研究プロジェクトを具体化させ、基礎的研究に着手した。以上の点から、内容的には予定よりはるかに超えた成果を得ているが、印刷公表が次年度に回ったので、「おおむね順調」と自己評価した次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ラテン語の非人称受動表現について、第3回日本歴史言語学会で発表し、同学会誌に論文を発表する。 3)サンスクリット語文法とドイツ語史について、新たな知見を盛り込んだ概略を印刷公表する。 2)現代ドイツ言語文化史におけるモダリティとディアテーゼの重要性について、日常表現やポップカルチャーのテキストにおいて更に資料を収集し、分析考察する新たなプロジェクトを進め、膨大な規模で進んでいる日本文化の海外発信、海外受容の実態を言語学的に調査する新たなプロジェクトを立ち上げる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き資料を収集するための物品費は必要だが、予算の中心になるのは、 1)膨大なデータ処理が必要になるために、資料整理補助のための謝金 2)成果を試験的に印刷公表する印刷費 3)資料収集、研究交流のために旅費 となる。
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Research Products
(2 results)