2013 Fiscal Year Research-status Report
近現代の漢語動詞の演変分化による機能構文の構造発展と機能義変容に関する通時的研究
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23520499
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
藤田 益子 新潟大学, 企画戦略本部, 准教授 (10284621)
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Keywords | “把”構文 / 機能義 / 処置 / 致使 / 機能分化 |
Research Abstract |
全体の研究計画においては第三段階として「処置、致使を表す機能構文の発展」に関する研究を遂行した。手順と方法としては、歴史的な処置式の機能義(語法意義)の変貌と主語の施受の関係を明らかにすることを主軸として考察を展開した。“把”構文は、例外的な動詞の無い用例を除けば、基本的にS+“把”+N+Vp(V、VC、VN、V得Cの何れか)の構造により成り立つ。また、Sは動作主として人物の場合もあるし、前文において説明されたその場面の状況などが相当する場合もあり、省略されることも少なくない。つまり、“把”構文における必要最低限の構成要素は、“把”と「N(“把”の後ろの賓語)」と「Vp(=動詞+補語・名詞・“了”等)」であり、このNとVpの関係(施受)によって機能義に違いが生じると考えられる。 これらの機能義は分化したものであり、その要因は“把”構文自体の発展経緯が深く係っている。もともと“把”構文は処置義を中心発展してきたが、近代以降、構造の複雑化に伴い、致使義を表す“把”構文の用例に急速な増加傾向が見られることが、各時代を代表する白話資料からデータを集積することにより明らかとなった。 さらに動作の結果の生じるプロセスに注目して機能義を捉えると、この2つの相違の分岐点は「対象に何かをすることで、事が運ばれ、ある状態や結果を得る」、或いは「因果関係があってその成り行きの延線上で何かが起こり、ある状態や結果が引き起こされる」というポイントに帰結されることが確認された。そこで、この2つの観点によって“把”構文の意義と機能移行の経緯を詳らかにした。対象としたのは“以”、“把”、“將”、“捉”、“把”(“將”)、“拿”等である。 また一部の白話資料における北京語の口語(“把OV給了”、不如意、不愉快さを表す)や、“把”と“給”(受動)の重合の用例の有無についても考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
唐、宋時代の白話文献の用例確認のため『敦煌変文』、『白居易』、『朱子語類』等から、時代を下って『児女英雄伝』や王朔等の当代作品まで調査対象とすることを目標にしていたが、複数の資料に対するデータベースの整備作業に関して、それぞれの資料や版本に対する考察並びに確認作業に時間を要し、一部のデータベース化の作業が遅れ気味となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
第四段階においては、「ヴォイス(態)を表す機能構文(使役、受動)に関わる機能形成」に関する研究を予定している。 手順と方法としては、使役・受動構文を形成する語彙の盛衰と機能義の関係と文法的な機能を帯びる変遷のプロセスを考察する予定である。 総括的研究として、時間的な余裕がある場合は、第五段階として、動詞の機能構文と「施受同辞」の関係、漢語語法の意合性についても考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
もともとの計画に基づけば、平成24年度に急病で旅費を繰り越す結果となったことが原因である。平成25年度の使用予定額の使用額についてはほぼ予定通りに執行されたが、前年度の繰り越し分まで使用するには至らなかった。 金額は執行可能な範囲のものであり、次年度に旅費としての使用を計画している。
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Research Products
(1 results)