2011 Fiscal Year Research-status Report
電子コーパスによる現代中国語文法形成過程の実証的研究
Project/Area Number |
23520502
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
町田 茂 山梨大学, 教育人間科学部, 准教授 (20238926)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 中国語文法 / 普通話 / 清末民初 |
Research Abstract |
1.清末民初の言語資料として、以下の電子コーパスを導入した。『京話報』『中国白話報』『安徽俗話報』『福建白話報』『直隷白話報』『広東白話報』『安徽白話報』『嶺南白話雑誌』『繍像小説』2.本研究の目的は、清末民初の中国語資料から現代中国語文法の成立過程を実証的に示すことである。明清白話小説では同一の文法構造が多様な意味機能を担うという現象が見られるが、導入した電子コーパスを検索した結果、清末民初における文法構造の意味の縮小を伺わせる結果を得ることができた。例えば「A+『他』+『[一]個』+B」という構造で、「殺他一個片甲不留」「掃他一個乾乾浄浄」「問他一個準信」「給他一個措手不及」「問他一個明白」のような白話小説同様の用例が見られる一方で、「起他個小名」「譲他個酔」「放他個門上」「成他個人」「防他個再来」と同類の用例はまだ確認されていない。これは、「文法構造の種類を豊富にすることで、一つの文法構造が担う意味の範囲を限定し、その結果多義形式を極力減少させる」という現代中国語の特徴につながるものである。一方、明清白話小説で見られた、「動詞+『不了』」が「動作を行うことが不可能」「動作が継続して終わらない」という二つの意味を担うという現象は、今回検索した電子コーパスではほとんど見られなかった。後者に対しては「動詞+『個』+『不了』」が用いられ、これは現代普通話における用法と一致する。ただし、「忙不了」が「慌ただしくしてばかりいる」という意味で用いられる用例もあり、二つの文法形式への分化が完成していないことを伺わせる。3.この他、語彙においても興味深い現象を発見した。清末民初では「点鐘」が時間量の単位として用いられたことが知られているが、今回の検索を通して、新聞の同一の紙面において「点鐘」が時間量の単位と時刻の単位の両方の意味で用いられる用例を発見することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
清末民初の言語資料の電子コーパスの導入作業を進めることができた。また、導入されたコーパスを検索することにより、明清白話小説に見られる「一つの文法構造が多様な意味機能を担う」という現象が清末民初において多少緩和されるという見通しを得ることもできた。ただし、電子コーパスはその量が増えるほど新たな現象を発見できる可能性が増すため、今後データを補充する過程で、現在の見通しの修正が必要になるかもしれない。さらに、この文法の細分化・分析化の背後にある原因については、まだ考察が進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、以下のように進める予定である。(1)より多くの電子コーパスを補充する。現在、『天津白話報』をはじめ、清末民初の新聞・文学作品等の電子データを補充する方向で準備を進めている。(2)電子コーパスの検索作業を継続する。既にいくつかの文法構造の意味機能に関して一定量の用例を得ているが、今後はその量を補充すると共に、これまで十分に収集してこなかった他の文法構造(動詞+状態補語、動詞+程度補語、介詞構造など)についても用例を収集していきたい。(3)文法の細分化・分析化の背後にある原因を考察する。これまで量詞『個』の発達に注目してきたが、今後はそればかりでなく、補語の多様化・介詞の発達など多方面を考察していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)清末民初言語の電子コーパスを補充する。(2)必要に応じてデータの整理に学生アルバイトを雇用する。
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