2013 Fiscal Year Annual Research Report
オモ系少数言語バスケト語の文字選択および母語教材作成に関する調査研究
Project/Area Number |
23520510
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
乾 秀行 山口大学, 人文学部, 准教授 (10241754)
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Keywords | エチオピア / 少数言語 / バスケト語 / 母語話者 / 教材作成 |
Research Abstract |
本研究の目的は、筆者が長年続けてきたオモ系少数言語バスケト語のフィールド調査の結果を母語話者に還元するために、母語教材を作成することである。 エチオピアで話されている多くの少数言語は文字を持っていない。本研究の対象であるバスケト語も文字を持たない。文字を持たないエチオピアの少数民族が作業語として機能するアムハラ語の文字であるアムハラ文字を用いて母語を表記するのか、それとも正確に音声表記が期待できるローマ字表記を選ぶのかが大きな課題であった。インフォーマントと協議を行い、現地小学校教師に試作品を使ってもらった結果、最終的にローマ字表記が適切であるとの結論に達した。 母語話者のための教材は、インフォーマントと協力して、「文字編」「単語編」「会話編」「例文編」「教師用文法編」の全部で5つを作成した。「文字編」と「単語編」には絵を付け、「会話編」「例文編」には英語、アムハラ語の対訳を付け、「教師用文法編」にはアムハラ語対訳を付けた。教材は、バスケトにある3つの小学校に冊子で配布し、毎年利用できるように電子媒体も付け、担当教師に使い方の説明を行った。 世界の多くの少数言語は文字を持たず、自国の公用語(多くの場合植民地時代のヨーロッパの言語)を日常生活で使うことを余儀なくされている。それが過度に進むと言語交替が生じ、少数言語は将来消滅するかもしれない。本研究では、少数言語が公用語と共存共栄するために、まず母語の文字の提案から始めた。そして母語教材を提供することで、母語話者が将来も母語を使い続けていくための環境整備を行ったモデルケースとして位置づけられる。
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