2012 Fiscal Year Research-status Report
フランス語における不定名詞句UN Nの内包的解釈について
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23520515
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
長沼 圭一 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (90514646)
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Keywords | 仏語学 / 不定名詞句 / 内包 / 属詞 / 総称 / 非特定的 |
Research Abstract |
平成24年度は、総称の解釈を持つ不定名詞句UN Nについて考察を行った。一般に、フランス語における総称文の主語名詞句は、Les chats sont carnivores. / Le chat est carnivore.(ネコは肉食である。)に見られるように、LES NやLE Nのような定名詞句の形で現れるが、Un homme ne pleure pas.(男は泣いたりしない。)のように主語位置の不定名詞句UN Nが総称を表していると解釈できる例も見られる。このような不定名詞句UN Nを主語とする総称文については、これまで、多くの場合モダリティー表現を伴った主観的・評価的記述であり、特定の個体を想定した発話であることが指摘されてきた。総称文の主語として現れるUN Nの名詞を観察してみると、大部分は、職業、身分、国籍、性別などを表す名詞であり、コピュラ文の属詞位置に無冠詞で現れる名詞と同じタイプの名詞であることが分かる。このタイプの名詞は、社会的・文化的分類の操作が働いており、分類すべきクラスがあらかじめ設定されているという特徴を持っている。このことから、このような名詞に対しては、すでに一般に認められている社会的規範やステレオタイプなどの評価が構築されており、それによって、主観的・評価的内容を記述する総称文に容易に用いられうると考えられる。また、UN Nの形で現れているのは、発話の原因となる特定の個体が語用論的に存在していることが示唆されていることによると推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度については、当初研究計画として立てていた予定どおりに進んでおり、特に問題はなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、非特定的解釈を持つ不定名詞句UN Nについて論ずる。Je vais attraper un poisson.(私は魚を捕まえるつもりだ。)という発話においてun poissonという不定名詞句は二通りの解釈が可能である。一つは聞き手にとっては未知の魚であるが話し手にとっては既知の魚であるという特定的解釈、もう一つは魚であればどの魚でもよいという非特定的解釈である。特定的解釈の場合、un poissonは言語外に存在する具体物と結びつきうるが、非特定的解釈の場合、un poissonは具体物と結びつくわけではなく、概念としてとどまっている。後者の非特定的解釈は本研究の重要なキーワードである内包と大きく関わっていると考えられるため研究対象としてとりあげることとし、このような非特定的解釈を持つ不定名詞句UN Nを含む実例を収集し、先行研究を参照しながら分析を行い、そのメカニズムを明らかにしていくことを目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、平成24年度同様、研究費の大半を研究資料の収集に充てる予定である。
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