2012 Fiscal Year Research-status Report
18世紀ドイツの書きことばにおける口語性の機能―社会語用論的・言語意識史的研究
Project/Area Number |
23520522
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
高田 博行 学習院大学, 文学部, 教授 (80127331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SCHARLOTH J. 獨協大学, 外国語学部, 准教授 (70585786)
細川 裕史 学習院大学, 文学部, 助教 (60637370)
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Keywords | 国際研究者協力 / ドイツ / ドイツ語史 / 言語規範 / 日常語 / 方言 / 話しことば |
Research Abstract |
18世紀ドイツにおける口語性に関わる言説を機械可読のデジタルデータとして蓄積した。それを分析することによって、18世紀に入ると簡明でわかりやすい文体が復権し始め、口語性が見直されたことがわかった。口語性が同時代の言語研究者によって「日常交際語 (Umgangssprache)」として捉えられるのは、標準文章語の確立する18世紀後半を待ってからである。具体的には研究成果は次の4点にまとめられる。 1)東中部ドイツ・低地ドイツ型の標準文章語がスイス、オーストリア、バイエルンにも普及し終えた1770年代になると、公的状況で書かれる標準文章語(文語性)とのコントラストにおいて、私的状況で語られる日常交際語(口語性)が明確な輪郭を得た。 2)18世紀末に、都市部の教養人たちは私的状況では方言を放棄せず、公的状況では標準文章語(文語)に近い話し方をする二言語併用状態にあった。その結果、方言と標準文章語とが混交して、両者を仲介する日常交際語が形成された。ここでは、日常交際語は私的状況と公的状況の両方で話された。 3)公的状況で話される「標準ドイツ語の日常交際語」は、公的な通信文などに書き綴られることによって、日常交際語は文字としても実体化した。 4)このように日常交際語は、口語性と文語性の間の広いスペクトルをカバーすると同時にメディアとして音声と文字の両方を有するに至った。日常交際語を、人工的で公的な標準文章語と素朴で私的な方言との間の緩衝材として捉えてみると、ひとが多様な半公的・半私的状況においてその都度口語性・文語性の程度をうまく調整してコードスイッチングしていくのに格好の手段であったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
18世紀後半に、年代が進むにつれて「日常交際語」という概念が拡大していくプロセスをかなり明確に示すことができた。また、海外から招聘したStepfan Elspass教授(アウクスブルク大学)からいただいた19世紀の庶民の書きことばに関する指摘から、研究構想全体についての大きなヒントをいただけた。
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Strategy for Future Research Activity |
共同研究をさらに推進し、ドイツからAndreas Gardt教授(カッセル大学)を招聘し、18世紀の言語観・ドイツ語観に関する専門的知識を教示いただく。最終的に、すべての結果を統合して、18世紀の書きことばにおける話しことば性の、とりわけ社会的意義について結論を導く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当無し
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Research Products
(3 results)