2013 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀ドイツの書きことばにおける口語性の機能―社会語用論的・言語意識史的研究
Project/Area Number |
23520522
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
高田 博行 学習院大学, 文学部, 教授 (80127331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SCHARLOTH J. 獨協大学, 外国語学部, 准教授 (70585786)
細川 裕史 学習院大学, 文学部, 助教 (60637370)
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Keywords | 国際研究者交流(ドイツ、オーストリア) / ドイツ語史 / 言語規範 / 話しことば / 日常語 / 都市化 / ポライトネス |
Research Abstract |
1750年頃にドイツ語圏全域で高地ドイツ語文章語の受け入れが完了したあと、18世紀末には、教養人は公的場面ではできる限り標準文章語に近い話し方をすることが好ましいという意識をもった。とりわけ低地ドイツでは公的場面において書籍に書いてあるとおり発音をすることが実践された。そして、L変種(低い変種)である方言とH変種(高い変種)である標準文章語とが言語接触した結果として、都市で「日常語」が生まれた。それにより、硬直的で形式的な傾向のあった標準文章語が日常語という形で話しことば化して柔軟性を得た。 都市化が進むなか、種々の公的場面に参加する機会および学校教育を受ける機会を得た一般大衆は、19世紀になって標準文章語を獲得する。この標準文章語の平準化の進展は、18世紀後半に親称のdu の使用範囲が大幅に拡大したことと同じ脈絡で説明ができる。これは、1800年頃を境にして(相手との距離をとる)ネガティブポライトネスから(相手との距離を縮める)ポジティブポライトネスへ移行したことを示唆するひとつの重要な現象である可能性がある。日常語を、Koch and Oesterericher (1985)の意味での、私的な「近いことば」と公的な「遠いことば」との間の緩衝材と捉えてみると、ひとは「遠いことば」と「近いことば」との間の座標軸上の位置で書きことば性と話しことば性の程度を調整できる日常語を、多種多様な場面(私的・公的場面、そして半私的・半公的場面など)に合わせて使用し、そのことによってポライトネスを制御することが可能になったと言える。 大都市ベルリンにおいて日常語が際立ったのは、まさに都市化にともなう日常生活の多様化のなかで、公私のことばに微妙な濃淡を与える必要があったからであると考えられる。
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Research Products
(9 results)