2012 Fiscal Year Research-status Report
インドネシア国スラウェシ島の絶滅危機言語の多面的記述と言語データのアーカイブ化
Project/Area Number |
23520526
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
内海 敦子 明星大学, 人文学部, 准教授 (70431880)
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Keywords | インドネシア / オーストロネシア語学 / アーカイブ / 記述言語学 / 社会言語学 / サギル諸語 / トンサワン語 |
Research Abstract |
私の研究題目は「インドネシア国スラウェシ島の絶滅危機言語の多面的記述と言語データのアーカイブ化」である。北スラウェシ州に存在する11の少数民族言語のうち、バンティック語、タラウド語、トンサワン語に焦点をあてて調査を行い、分析し、かつ言語データをアーカイブ化して他の研究者やこれらの言語の話者がアクセスできるように整備するのが目的である。平成24年度は、4月から7月にかけて、23年度に調査を行って得たデータの整理と分析を行った。そして、7月に開催された第12回国際オーストロネシア言語学学会(12th International Conference on Austronesian Linguistics)において、バンティック語のストレスについての発表と、タラウド語のアスペクトについての発表を行った。 8月にはタラウド語とバンティック語の調査を行った。また、同じく北スラウェシ州で話されているサギル語の社会言語学的な資料を得るため、アンケートを配布・回収した。9月から12月にかけて、23年度、24年度の調査で得たデータを、アーカイブ化するため、整理した。また、北スラウェシ州で話されているインドネシア語の方言、マナド方言の書記方法について、日本インドネシア学会において発表した。 平成25年1月も、データの整理と分析を行った。2月初めにオーストラリア、La Trobe大学の研究員で、当研究の連携研究員であるDr. Anthony Jukes氏に言語データのアーカイブ化を依頼するため、出張を行い、これまでに得た言語データを整備し、La Trobe大学のアーカイブにアップロードするための準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バンティック語とタラウド語に関しては、アーカイブ化に耐えうる、高音質の音声データおよび映像データを多数収集した。この中には、タラウド語の方言に関するデータも含まれる。タラウド語に関しては従来の研究がほとんど行われていなかったが、方言に関してもほとんど記述が存在しなかった。平成24年度においては、タラウド語が話されている三つの大きな島から合計7カ所の方言データを収集した。サリバブ島からはLirung, Moronge, Sereの三カ所、カバルアン島からはBulude, Mangaran, Pangeranの三カ所、Karakelang島からはNiampak一カ所から250語程度収集した。これらのデータは今まで調査されたことがなかったため、大変貴重である。 また、タラウド語話者による民話のデータ、タラウド語の歌、など民俗的資料も収集し、言語データと同様にアーカイブ化のための整備を行った。 バンティック語に関しては、談話データを集中的に集め、その書き取りおよび注釈付けのため、調査協力者とのセッションを行った。また、バンティック語のストレスパターンについて不十分なデータが存在したため、音声データを追加で収集した。 オーストラリアのLa Trobe大学研究員であり、当研究の連携研究員であるDr. Anthony Jukes氏に言語データのアーカイブ化を依頼し、それぞれのデータの説明を付与し、誰がアクセスしても理解できるよう、データの整備を行った。 平成24年度は、私が参加する「インドネシア諸語の記述的研究」研究会(於東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所主催)において、四回の口頭発表を行い、国際オーストロネシア言語学会にて二本の口頭発表を行った。これにより、多くのインドネシア諸語の研究者のコメントを得て、研究を進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究は、以下の三つの方向で進めていく。第一に、これまでに得られたデータで、まだアーカイブ化のための整備をしていないものを整理し、私が所持しているすべてのデータを他の研究者やネイティブスピーカーと共有できるようにしていく。アーカイブの整備をしている大学との連携がとれてきたので、今後も連携を深めていく。 第二に、現地調査を数週間かけて行い、これまでデータをあまりとっていないトンサワン語のデータを本格的に収集する。音声・音韻のデータはある程度とっているので、形態素と統語論の分野の分析に必要なデータを得るため、数人の調査協力者をつのり、対面調査を行う。また、民話や歌などの民俗データはトンサワン語地域ではほとんど収集されていないので、祭りなどの場に出向き、アーカイブ化できるようなすぐれた映像データと音声データの収録を行う。 第三に、タラウド語の方言調査を研究助手の手をかりてさらに進める。Karakelang島の調査地点は一カ所だけだったので、今後4カ所から5カ所の地点で方言調査を行う。また、できればMiangasなど、ナヌサ諸島のいくつかの地点での方言調査を行いたい。 第四に、これまでのデータを分析したものを、口頭発表および論文の形での発表を行う。まず、サギル語話者の社会言語学的調査票のデータの分析をし、論文にまとめて発表する。タラウド語の方言について口頭発表をし、論文にまとめる。またタラウド語の動詞の形態論について、口頭発表を行い、論文にまとめる。バンティック語の会話におけるダイクシスについて追跡調査を行い、その結果を論文にまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は言語アーカイブ化および英語論文発表のための英文校閲に20万程度の使用を見込んでいる。タラウド語およびサギル語データを収集する研究助手への謝礼に10万程度、現地調査およびアーカイブ化作業のため、オーストラリア出張に45万円程度を見込んでいる。平成25年4月から7月にかけて、アーカイブ化のため言語データの整備を進め、連携研究者のDr. Anthony Jukes氏にLa Trobe大学のアーカイブの保存してもらう。同時に、バンティック語、タラウド語の情報構造に関する研究を、口頭発表と論文発表の両方の形で公開する。 8月には3週間程度の現地調査を行い、主にトンサワン語の言語資料を収集する。音声データだけではなく、映像データをきちんと保存できる高い質で記録する。トンサワン語の統語構造が解明できるよう、インタビューのセッションと談話資料収集につとめる。 9月から26年3月までの間に、バンティック語、タラウド語の二つの言語については、音声・音韻・形態・統語構造の全体が明らかになるような文法書を刊行を目標として執筆する。
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Research Products
(9 results)