2012 Fiscal Year Research-status Report
言語コミュニケーションにおける場の理論の構築:近代社会の問題解決を目指して
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23520527
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大塚 正之 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (40554051)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井出 祥子 日本女子大学, 文学部, 客員研究員 (60060662)
岡 智之 東京学芸大学, 留学生センター, 教授 (90401447)
櫻井 千佳子 武蔵野大学, 環境学部, 准教授 (30386502)
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Keywords | ba theory 米国 |
Research Abstract |
平成24年度の実施計画に基づき、まず、平成24年9月8日に開催された日本認知言語学会第13回大会において、『場の理論とは何か』というテーマで、ワークショップを開催した。30~40名程度の会員が参加し、質疑応答を行い、場の理論に基づく言語学の必要性と可能性について検討が行われた。 これを踏まえて、場の言語学についての継続的な開かれた研究会を創設するという観点から、平成25年に入り、『場の言語・コミュニケーション研究会』の創立総会を早稲田大学において開催し、場の言語について中心的に研究する研究会を発足させた。そして同年3月に第1回場の言語・コミュニケーション研究会を開催し、生命関係学の視点から場の理論を研究しておられる清水博東大名誉教授(場の研究所長)の講演会を実施し、場の基礎理論について学習し、言語との関係性について検討を行った。この研究会は、概ね2か月に1回のペースで開催する予定である。 これと並行して、カリフォルニア大学バークレー校ウイリアム・ハンクス教授との意見交換を行い、場の理論に基づく言語学の構築という視点から、当研究会代表者大塚正之と同教授との対談の準備のため、ハンクス教授の著作"Intertexts"の部分的翻訳作業を行い、それに基づいて大塚の意見の草稿を作成した。 これらの研究成果を公表し、市民に還元する一助とし、また、場の理論に基づく言語学の情報発信の拠点として、場の言語学のホームページを作成し、その試作画面が完成中である。今後は、更にこの画面を充実させ、会員専用ページも加えて、場の言語学の意見交流の場として活用する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度においては、非言語的、身体的コミュニケーション理論の研究者とも連携をして、日本認知言語学会においてワークショップを開き、場の理論を具体的に言語に応用する研究の成果を公表することができた。 また、場の言語・コミュニケーション研究会を発足させ、継続的な研究の基盤を作ることができた。この研究会は、オープンなものであり、言語だけではなく、幅広くコミュニケーションについて場の視点から考えることに関心のある研究者が参加しており、言語のみならず非言語的なコミュニケーションとの学際的研究活動の場として機能することが期待できるようになった。 海外の研究者との連携として、マヤ言語の研究者であり、かつ文化人類学者であるカリフォルニア大学バークレー校のウイリアム・ハンクス教授との連携が進んでおり、同教授の著書である"Intertexts"の部分的翻訳を行い、マヤの言語と日本語とに共通する場の視点について研究を開始することができた。将来、場の理論に基づく世界的な規模での場の言語学を構築するにあたり、重要な布石を打つことができたと思われる。 最後に、場の言語学を一般市民に開かれたものにするとともに、場の言語学に関心を持つ研究者の意見交換の場として、インターネットで検索可能なホームページを策定することができた。まだ完全ではないが、会員相互の頁や英文頁を、今後付加し、充実させる基盤を作ることができた。これまでの研究及び今後の研究をネットを通じてその成果を一般に公開していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今回の研究の3年目であり、まとめの年であるので、これまでの研究成果を元にして、更に場の言語学に基礎固めを行いたいと思う。 まず、平成25年9月に開催される日本認知言語学会第14回大会において、ワークショップ「場の理論と日本語の文法現象」を開催し、場の理論に基づいた言語学の構築を目指し、特に日本語の文法現象が従来の言語学理論よりも場の理論からうまく説明できることを例証し、議論する。 また場の言語・コミュニケーション研究会を隔月に実施し、その都度、場の理論を応用することにより、言語やコミュニケーションを例証できるケースを蓄積しながら、その一般理論を構築して行くことを予定している。 更に、海外との連携として、アメリカ合衆国カリフォルニア大学バークレー校のウイリアム・ハンクス教授と当研究会代表者である大塚正之との対談を予定している。この対談については、言語使用・コミュニケーションの分野で最も評価の高い国際ジャーナル、Journal of Pragmaticsに掲載を予定しており、これによって、場の言語学を世界に広く伝える契機となることを期待している。 また、可能であれば、場の理論に関心を持つ言語学以外の分野の学者らとも学際的研究を行うべく、場の理論についてのシンポジウムを開催できればと考えている。これについては、まだ具体化できておらず、これから具体的検討に入りたいと考えている。 なお、こられの研究成果は、随時、ホームページに紹介し、社会に対して還元していきたいと考えている。また、ホームページを活用することにより、場の言語・コミュニケーションに関心を持つ学者らの共同研究の場として、会員相互の活発な議論が展開できるコーナーを設けて議論を深めたいと考えている。そして、できれば英文のページも開設し、欧米の学者との交流を図ることも試みたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の目標を達成するため、次年度研究費については、次のとおり、使用したいと考えている。まず、成果発表としての、第14回日本認知言語学会大会(京都外国語大学)の学会出張旅費を支出予定である。 また、場の言語・コミュニケーション研究会(隔月開催)のための、通信費、印刷費を支出予定である。 さらに海外との連携のため、米国からウイリアム・ハンクス教授を招待して、対談を行う予定であるため、これにかかわる旅費、また通訳費、口頭での対談の反訳作業としての諸経費、反訳された原稿の翻訳費用を見込んでいる。 また、場の理論及び場の言語・コミュニケーションに関心を持つ研究者が集うシンポジウムの開催を計画しており、そのための通信費、印刷費、旅費の支出を予定している。 更に、本研究の成果を公表するため、ホームページを充実させる必要があるため、ホーム頁の管理費用、海外への往訪発信のための翻訳の諸経費を予定している。
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