2011 Fiscal Year Research-status Report
法廷通訳者の語彙・表現が心証形成に与える影響に関する研究
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23520528
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
有賀 幸子 (中村 幸子) 愛知学院大学, 文学部, 准教授 (50513248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 真木子 金城学院大学, 文学部, 教授 (90388687)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 法廷通訳研究 |
Research Abstract |
この研究の目的は、外国人刑事事件の裁判員裁判において、外国人の証言を法廷通訳者が日本語に訳す際に選択する訳語や表現の違いによって裁判員が抱く外国人被告人への印象(心証形成)にどのような影響が及ぶのかを、一般社会人を模擬裁判員とみなした模擬裁判を実施し、明らかにすることである。 この目的を達成するために、初年度である平成23年度は、できるだけ多くの通訳付き裁判の傍聴を行い、刑事事件審理の実際の姿を観察することからスタートすることとした。法廷では録音等は禁じられているため裁判傍聴において観察したことはすべて手書きでメモした。これらをパソコンに入力し、データ化した(法廷観察データ)。これらから、通訳する際に問題となりうる語や表現を抽出し、個人情報等に配慮しつつ、模擬裁判シナリオを作成していった。外国語での被告人や証人の証言を、「犯罪を連想させる語・表現」を使って訳したものと「連想させない語・表現」を使って訳したもの2種類のシナリオを作成することができた。この方法で、4つのシーンのシナリオ(合計8本)を作成した。 これらのシナリオは、英語母語話者のチェックおよび法律家の監修を経た。 監修後のシナリオを用いて、公募した一般社会人80名に対して、模擬裁判を上演した。80名は二つのグループに分かれ、それぞれ「犯罪を連想させる語を使った通訳」、「使わない通訳」を視聴した。上演後は、被告人に対する心証形成(有罪無罪・量刑・証言の信憑性など)を評価するアンケートに答えてもらった。2つのグループ間に統計的に有意な差が現れるかどうか、現在集計した結果を分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内外で豊富に通訳付き刑事事件の傍聴を行ったため、多くの裁判観察データが集まり、我々が作成するシナリオの現実性をより高めることができた。計画当初より多い人数の一般市民をバランスの良い年齢構成で集めることができ、データ分析の信頼性が高まることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目となる平成24年度は、当初の予定通り、得られたアンケートデータの分析を研究活動の中心に据える予定である。通訳者による異なる語の使用が、心証形成(有罪無罪・量刑・証言の信憑性など)に影響を及ぼすかどうかに焦点をあて、分析する。得られた結果は、内外の学会等で研究発表の形で公にしてゆく。また、通訳関係の学術誌や法と言語に関連した雑誌等に投稿する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度へ繰り越す研究費は、40,799円であり、次年度交付予定額は研究分担者への分担金も含め、60万円である。この予算は、主として、以下のように使用する予定である。4~7月 データ分析経費8~9月 内外学会参加費・旅費10~1月 データ分析経費2~3月 内外学会参加費・旅費
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