2012 Fiscal Year Research-status Report
法廷通訳者の語彙・表現が心証形成に与える影響に関する研究
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23520528
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
有賀 幸子(中村幸子) 愛知学院大学, 文学部, 准教授 (50513248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 真木子 金城学院大学, 文学部, 教授 (90388687)
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Keywords | 法廷通訳研究 |
Research Abstract |
この研究の目的は、外国人刑事事件の裁判員裁判において、外国人の証言を法廷通訳者が日本語に訳す際に選択する訳語や表現の違いによって裁判員が抱く外国人被告品への印象(心証形成)にどのような影響が及ぶのかを、一般社会人を模擬裁判員とみなした模擬裁判を実施し、明らかにすることである。 この目的を達成するために、初年度である平成23年度には傍聴等で得られた情報をもとに合計8つのシーンをシナリオ化し、一般市民80名を対象に模擬裁判を実施した。模擬裁判視聴後各シーンに関するアンケート調査を行いそれらをデータ化した。分析を行うのに十分な量のデータが得られた。 平成24年度は得られたデータを分析し、その結果の一部を学会等で口頭発表し、学術誌にも投稿した。その中でも、我々が関心を寄せたのは、通訳者の訳語選択によって聞き手の印象が左右されるかどうかであり、我々は左右されるという仮説を立て、統計ツールを用いて検証を行った。結果、一部のシーンのデータでは我々の仮説を指示する結果が得られた。 統計的には仮説が成立しなかったシーンについては、テキストマイニング手法によりアンケート自由記述欄の書き込みから特徴的なコメントを抜き出す分析を試みたところ、興味深い結果が得られた。これについても口頭発表を行った。学術誌へも投稿中である。 平成25年(最終年度)は、これまでに扱わなかった分析手法を取り入れ、さらに別の学術誌への投稿も行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年目である平成24年度は当初の予定通り、得られたアンケートデータの分析を研究活動の中心に据えることができた。通訳者によって異なる語の使用が、心証形成(有罪無罪・量刑・証言の信ぴょう性など)に影響を及ぼすかどうかに焦点を当てた分析を行った。その結果、シーン1A=犯罪色のある語を使ったシナリオとシーン1B=犯罪色のない語を使ったシナリオを見た人たちの判断に統計的有意差が確認できた。 さらに統計的手法を利用しただけでは部分的有意差しか出なかったシーンについても、テキストマイニングの手法を活用して興味深い結果を得られることができた。これらの結果を論文にまとめ内外の学会で口頭発表した。学術誌へも投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は研究の最終年度であり、これまで扱わなかった分析手法も取り入れ、われわれの掲げた仮説を認知言語学などの別の視点からも検証したい。平成24年度に口頭発表した研究成果についてまだ学術誌へ未発表のものについては論文にまとめ、投稿する予定である。年度の後半には、この研究の成果について全体的な取りまとめを行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度へ繰り越す研究費は27,654円であり、最終年度交付予定額は研究分担者への分担金も含め、100万円である。この予算は、主として、以下のように使用する予定である。 4~7月 データ分析経費 8~9月 内外学会参加費・旅費 10~1月 研究成果とりまとめ経費 2~3月 研究成果発表経費
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Research Products
(5 results)