2013 Fiscal Year Annual Research Report
法廷通訳者の語彙・表現が心証形成に与える影響に関する研究
Project/Area Number |
23520528
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
有賀 幸子 (中村 幸子) 愛知学院大学, 文学部, 教授 (50513248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 真木子 金城学院大学, 文学部, 教授 (90388687)
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Keywords | 法廷通訳研究 / 言語分析 / 語彙使用 / 裁判員 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、これまで法廷審理に影響を及ぼさないと考えられてきた法廷通訳者が、その語彙選択によって聞き手の印象を左右する存在であることを明らかにすることであった。1年目に80名の市民を模擬裁判員とする4つのシーンからなる法廷実験を行い、その結果から、法廷通訳人が選択する語彙の違いによって聞き手の判断にズレが生じること認められた。すなわち、「ひったくった」のような犯罪を連想させる訳語を使った場合は、そうでない訳語を使った場合に比べると有罪に傾き、罪の重大さや証人の信頼性や証言の信憑性などの項目においても両者の間に統計的有意差が確認された。さらに、どの語がきっかけとなって判断を下したかの項目の回答を精査したところ、シナリオ中には使われていなかった語彙が記入されているケースが複数見つかった。そこで2年目にそれらを刺激とする追加実験を行った。その結果、一般的な動詞(蹴った)等よりも、名詞化された語(蹴りを入れた)の方が聞き手の記憶に残りやすく、またその方がより有罪性を感じる等の傾向がつかめた。こうした研究結果を国内外で共同および単独で口頭発表(イギリス・クイーン大学、明治大学等)した。また学会誌や大学紀要への投稿(金城学院大学文学部紀要、愛知学院大学文学部紀要等)も行った。今後は言語使用を含めた法廷通訳の問題に関して、一般市民および司法関係者の認識を高めることが必要であるため、3年目は本課題の研究成果報告会と同時に法律家を対象とする講習会を行うこととした。本研究課題のシナリオ作成等において、法廷通訳制度の先進国であるアメリカ・ハワイ州での裁判傍聴が大いに参考になった。そのためハワイ州より教育研究の専門家である Dr. Suzanne Zeng(ハワイ大学通訳翻訳研究センター所長)を招聘し、名古屋と神戸において講演会およびワークショップを行った(平成26年3月22―23日)。
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Research Products
(2 results)