2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520537
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
尾鼻 靖子 関西学院大学, 理工学部, 教授 (60362141)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 役割理論 / ポライトネス / 日本語 / 語用論 / 社会心理 |
Research Abstract |
23年度は次の研究計画を立てた。1.データ収集、2.「役割理論」に関する参考文献を読み、ポライトネスへの応用を理論的に考察、3.海外研究協力者とデータ分析の打ち合わせ、および将来に向けての方向付けを行う。1.に関しては、さまざまなデータ(テレビの録画、インタビューの録音、ネット掲載の会話のコーパス)を収集し、それを書き起こした。また、そのデータからポライトネスストラテジー、敬語表現を拾い、どのような「役割」がどのようなストラテジーを取るのかを考察した。この分析は進行中である。2.に関しては役割理論、特にSymbolic Interactionismの理論(SI)について、文献を読んでいる。社会心理学の理論を語用論のポライトネスに応用するのは、前例がないため、SIの理論がどこまで日本語のポライトネス現象に応用できるのかまだ未知の状況であるが、SI理論の応用能力は高いと思われる。3.に関しては、3月初にオーストラリアを訪れ、長時間に渡って、海外研究協力者と、データの分析および将来に向かっての展望を話し合った。さらに協力者のほうでも日本語コーパスにアクセスし、取得してくれていたので、それもデータに加えることにした。分析がかなり進んだので、2012年度中に学会で最初のデータ分析結果を発表することにした。データはさらに分析する必要があるが、これまで日本語に特徴的なストラテジーとして、「繰り返しの対話」や「一つのまとまりの発話を数人で形成する会話」というのがデータに多くみられた。まずこの2点について仮説まで構築することに海外協力者からも賛同を得た。これらの2つは言語学的に分析はなされてきたが、「役割理論」に照らし合わせて分析するのは、当研究が初めてであると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
はじめの計画どおりにほぼ達成したと思われるが、データの量が最初に考えていたよりも増え、まだその処理の途中であることが少し心残りであるが、2年目もデータ処理を項目として掲げているので、間に合うと思われる。また、海外協力者からポライトネスについての参考文献の紹介もあったので、文献閲読に拍車をかける必要があると思われるが、当初の計画に沿ってほぼ順調に進んできた、というのが自己評価である論文に関しては、役割理論を紹介してそれが日本語におけるさまざまなストラテジーに応用できることを主に述べた論文を1本仕上げた。また、まだ準備段階ではあったが、International Pragmatics Conference(イギリス、マンチェスターにて。ただし当大学の出張費を使用)にて役割理論の紹介とポライトネス現象への応用の例を発表し、いくつかのコメントを聴衆からもらったので有益であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後次の点について研究を進める。1.データ分析(継続)およびその考察、2.rolesとポライトネスとの関連考察およびrolesの分類、3.学会発表。そのほかに文献閲読やデータも他にあれば収集する。1.に関しては上記の「繰り返し」と「複数の対話者による一つの発話形成」というストラテジー以外に、日本語に特徴あるポライトネスストラテジーを発見し、それがどこまで「役割理論」に応用できるかを調べる。2.はroles の分類によって、1.のストラテジーと照らし合わせて、総合的に日本語のポライトネスにおけるrolesとストラテジーの関連を見出す。3.前述の「繰り返し」と「複数の対話者による一つの発話形成」に関して学会発表および執筆を手掛ける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.データの収集に関してアルバイトを雇用する2.学会発表のための旅費3.参考文献の購入4.海外協力者の日本への旅費および謝金。なお、23年度からの繰越額7,766円については、24年度の海外協力者との通信費に組み込む。
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Research Products
(2 results)