2013 Fiscal Year Annual Research Report
東北日本海域における近世言語生活に関する研究-往来物資料からの分析-
Project/Area Number |
23520541
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
郡 千寿子 弘前大学, 教育学部, 教授 (50312476)
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Keywords | 地域研究 / 言語生活 / 往来物 / 東北 / 近世語 |
Research Abstract |
往来物は、日本社会の近代化に関わる重要な資料群であり、生活規範確立に寄与するものだが、発掘資料や資料的価値など、その研究は十分にすすんでいない。本研究は、東北地域所蔵の往来物資料の調査研究を基盤として、地域社会における言語生活の反映や文化形成に果たした役割などを解明し、新たな視点からの活用を提案しようとするものである。 すでにすすめてきた北東北地域(青森・岩手)所蔵資料との比較検討も目的のひとつであり、研究期間内に、青森、弘前、岩手に加えて、東北の日本海域の文化圏(秋田・山形・松前)を想定し、重点的に調査を実施した。函館や松前については、調査の結果、該当資料が少ないことが判明し、他方で秋田や酒田、山形では、該当資料が多数所在していることが判明した。23年度から24年度にかけては、秋田県立図書館所蔵資料調査、山形酒田市立光丘文庫所蔵資料調査、山形県立博物館教育資料館所蔵調査を実施し、目的別や出版地域別に資料を分類整理した。最終年度の25年度には、各地域ごとの所蔵資料調査結果を比較検討し、それぞれの所蔵資料の偏在状況についてグラフを用いて提示した。また、それぞれの地域ごとの文化特性についても、教育背景や出版文化の状況などを考慮しつつ言及した。 本調査研究を通じて、近世期における北前船を利用した西廻り航路の存在は重要であり、陸路だけでなく、海路での物資輸送とともに文化の流入や混交があったことを実証することができた。地域の文化的背景のありようが、近世期の往来物資料からの影響によるところが大きいことを検証し、日本海海域(秋田・山形酒田)と内陸部(弘前・山形)の文化特質の相違が、出版文化の拡がりと連動していた可能性についてグラフや数値で明示した。 研究成果は、国際学会・国内学会で発表し、研究論文としても、学会誌や大学研究紀要などで公表した。
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