2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520555
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
青木 博史 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (90315929)
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Keywords | 節 / 歴史的変化 / 準体 / 複合動詞 |
Research Abstract |
本年度は,まず,『国語史を学ぶ人のために』(木田章義編,世界思想社,2013年4月)における「第5章 文法史」を執筆した。本科研の研究成果をふまえ,文法史の全体像を分かりやすく一般向けに解説したものである。さらに,「複合動詞の歴史的変化」(『複合動詞研究の最先端』影山太郎編,ひつじ書房,2013年12月)を発表した。連用形が構成する節について,複合動詞という現象を通じて歴史的変化を描いた。この他,「日本語文法史研究の射程」(『国語研プロジェクトレビュー』4-2,2013年10月),「文法史研究の方法」(『日本語学』32-12,2013年10月)を発表し,これからの望ましい文法史研究のあり方について述べた。 3年間にわたる本研究においては,古典語における「節(clause)」の構造と歴史的変化をテーマとして研究を行った。連体形によって構成される従属節を連体節と名詞節に分け,このうち名詞節について,統語論的観点から説明を加えた。文中で格成分としてはたらく場合,文末で繋辞に続く場合,文末で単独で用いられる場合といったように,統語的環境の相違に注目しながら記述した。格成分は接続成分へと構造変化し,文末の名詞句も述語句へと変化する。従来断片的に言及されてきたこれらの諸現象を,統一的に把握することに成功した。同時に,連用形によって構成される従属節の問題を,複合動詞に注目して,その統語的性格と歴史変化について記述した。こうした歴史的観点からの説明は,古典語における単なる観察・記述にとどまらず,現代語(方言も含む)までを視座に収め,文法変化をダイナミックに描いたものとして,一般言語学へも貢献しうる重要な成果である。
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