2012 Fiscal Year Research-status Report
アスペクトとしての移動補助動詞と完了助動詞に関する共時的・通時的研究
Project/Area Number |
23520559
|
Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
福沢 将樹 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (30336664)
|
Keywords | アスペクト |
Research Abstract |
日本語学会からの依頼による書評「井島正博著『中古語過去・完了表現の研究』」において、中古日本語のテンス・アスペクト表現全般に亘って評した。そこでは学界全体に向けて議論を喚起したところがある。例えばアスペクトの定義、特に「φ」系アスペクトの指すところが曖昧になりがちなこと。また「地の文」と「会話文」の定義もまた今一度考え直されるべきこと。その他「テクスト論」を視野に入れた文献言語研究の可能性について、賛同の立場で評した。そこでは「虚構(フィクション)」テクストにおける「地の文」について、一部に「普通の言語」ではないとの見方があるが、そうではなくこれも立派な書記言語としてこれまで同様ないがしろにしてはいけないことを述べた。またそのためには「虚構」の「語り手」という存在をどう把握するべきか、言語研究者も正確に認識しておかなくてはならないが、この点は字数の関係上論じられなかった。別稿を準備中。 その他別稿を準備中の事柄として、表現主体の階層性について。「虚構」と「扮装」が異なるものとするモデル化を試みている。古代語のアスペクト表現の形式、例えば「助動詞」のみをアスペクト形式とするか、補助動詞や形式名詞等も含めてアスペクト表現と考えるかということを古代語においても文法化の過程(過渡期)として記述する必要。静的アスペクトと動的アスペクトの両方を見渡したアスペクト体系。 その他、時間推移の表現を論ずるにあたり、言語表現の主体(登場人物を兼ねる)は時間推移と共に自らも変貌してゆくことに関し、認知心理学・哲学等を視野に入れた基礎的な勉強中。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
散文資料の地の文だけでなく、韻文資料の調査がより重要であることがわかったため。 また認知科学的・心理学的および哲学的考察が必要であり、そちらの方に現在重点を置いているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
新たなテーマ(他学問分野)に発展する部分があったため、購入書籍の選定にあたり、年度内に優先順位をつけかねた。次年度に発注を行う。 このような事情も含め、当初の研究計画になかったテーマを含む研究へと変更することになる。そのため新たなテーマに関する知識・情報提供者を探すことが課題となる。近い分野の学内同僚からまず情報収集を行う予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
書籍購入費用に充てる予定である。
|