2012 Fiscal Year Research-status Report
明治後期の学術用語の伝播・浸透と現代日本語への影響に関する研究
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23520567
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
真田 治子 立正大学, 経済学部, 教授 (90406611)
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Keywords | 日本語学 / 計量言語学 / 語彙論 / 結合価理論 / 哲学字彙 / 近代語研究 / 井上哲次郎 / 学術用語 |
Research Abstract |
今年度は、本研究課題の主たる調査対象である『哲学字彙』他の明治から現代までの辞書類やコーパスの資料収集に努めるとともに、電子化された日本語の語彙資料を使って日本語の語彙分析の手法についての検討を行った。 これらの成果は、Qualico2012(国際計量言語学会)、国立国語研究所「コーパス日本語学の創成」プロジェクト共同研究発表会、『経済学季報』(立正大学経済学会)、『学芸国語国文学』等で発表した。 語彙の分析においては、従来のように語彙そのものの分析を行うだけでなく、文法論で構築の進んだ結合価理論を積極的に取り入れ、動詞などの自立語と助詞・助動詞といった付属語との共起関係や、その組み合わせの頻度の分析を行うことを目指している。 サンプルとして6つの動詞を取り上げ、これらが伴う助詞の使用頻度を結合価の分布の観点から分析した。その結果、ある動詞について出現する格助詞の種類や頻度の分布の全体像は3つの資料である程度似た傾向が認められ、また主格が出現するか省略されるかについても動詞によってある程度似た傾向が認められた。さらに、主格を示す助詞や主格省略については、主格の出現と省略の頻度分布は、助詞「に」「を」を伴う成分の頻度によって直接影響を受けているとはいえない、主格の出現と省略の頻度分布は、助詞「に」「を」を伴う結合価の有無による動詞の性質の差異と関連性がある、主格の出現・省略の頻度や主格にどの助詞を使うかは、言語資料が異なっても動詞によって一定の傾向があり、動詞によって個別にある程度傾向が決まっている可能性がある、という点が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
語彙研究の計量的分析について、文法論で構築された結合価理論を取り入れた新しい手法を、サンプルとして取り上げた語の分析結果とともに示すことができた。この手法は将来的には、語彙研究だけでなく自然言語処理や辞書研究、日本語教育などにも適用可能ではないかと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の主たる調査対象である『哲学字彙』との関連性が明らかになった資料群について引き続き比較調査を行う。また語彙の計量的分析手法の開発については、『現代日本語書き言葉均衡コーパス』や結合価辞書を使った解析を引き続き進める。 成果についてはCIL19(Congres Internationaux des Linguistes: 国際言語学者会議)(於ジュネーブ大学)での発表を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き語彙データや辞書データの比較調査を行うため、それらに必要なソフトウェアの購入、資料整理や英文校閲のための人件費、海外で成果発表を行うための旅費などの支出を計画している。
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Research Products
(8 results)